注⑴イギリスで最初に翻訳されたのは1846年のことである。H. Carpenter, et al., The Oxford Companionto Childrenʼs Literature, Oxford / New York, Oxford University Press, 2005 (1984), p. 549.― 39 ―― 39 ―た。当時のイギリスでのアンデルセンの知名度を考慮しても、《あひるの子》と童話の『みにくいあひるの子』を結びつけることは妥当ではないだろうか。《あひるの子》はミレイの多くのファンシー・ピクチャーのなかでも集大成ともいうべき晩年の作例であり、ミレイのファンシー・ピクチャーを包括的に研究するうえで見逃せない作品の1つである。本稿では言及しきれなかったが、本作は《シャボン玉》が石鹸広告に転用されたことで商業的だという批判を浴びたのちに描かれた作品であるため、商業利用されていないにも関わらずその延長線上で批判されることもあった(注28)。こうした事実はラファエル前派を脱退後のミレイが不当に評価されてきたことを考えるうえで重要であり、今後さらに調査を進めたい。謝辞《シンデレラ》の図版の整合性については東京藝術大学の佐藤直樹准教授から貴重なご助言を頂戴し、《長靴をはいた猫》の複製版画の撮影および本稿への図版掲載に関しては和洋女子大学学術情報センターのご高配を賜りました。ご協力頂いた皆様に末筆ながら心より感謝申し上げます。⑵国立西洋美術館は、本作が渡米していたことを来歴に記していないが、ミレイの息子ジョン・ギル・ミレイや、ジェイソン・ローゼンフェルドによって指摘されている。J. G. Millais, TheLife and Letters of Sir John Everett Millais, president of the Royal Academy, Vol.Ⅱ, New York, FrederickA.Stokes Company, 1899, p. 484; 木島俊介監修『ジョン・エヴァレット・ミレイ展』、朝日新聞社、2008年、130頁。⑶この画廊は、松方のロンドンでの滞在先からほど近かったという。陣岡めぐみ責任編集『国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展』、国立西洋美術館、読売新聞東京本社、NHK、NHKプロモーション、2019年、94頁。⑷川崎造船所の経営破綻とコレクションの売立については以下に詳しい。川口雅子「重役私財提供と松方コレクション売立」(『国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展』、2019年)、39-47頁。⑸コレクションの重要な作品は、直接有力者の手に渡ることが多かった。陣岡、前掲書、94頁;石橋財団ブリヂストン美術館編『西洋美術に魅せられた15人のコレクターたち1890-1940』、石橋財団ブリヂストン美術館、1997年、62-64頁。⑹国立西洋美術館学芸課編『国立西洋美術館名作選』、国立西洋美術館、(財)西洋美術振興財団、2006年(改訂)、98頁;国立西洋美術館他編『国立西洋美術館名作選』、西洋美術振興財団、2018年(改訂)、170頁。
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