鹿島美術研究 年報第37号別冊(2020)
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― 511 ―― 511 ―が、この回答には「配偶者」の場合があることに留意したい(前掲注⑸参照)。─設問3. あなたは何の目的でワット・パイローンウアの地獄─餓鬼界を見に来ましたか。以降の質問は自由記述形式の回答となるので、類似した回答を分類して集計した。たとえば、「善悪・地獄・天国を子供に教える」「善悪を知るよう子供に教える」などの回答は「教育のため」とし、「注意を促す」「悪いことをさせない」などの回答は「訓戒のため」と分類した。また回答内容によっては1回答が複数項目に分類される場合があり、その場合はそれぞれを有効回答として計算した。以上をふまえ最も多かった回答は、「教育のため」で30%であった。なお、アンケート対象者のうち45%以上が子供(dekであらわされる程度)を連れていた点は、特記すべきであろう(注9)。次いで多かった回答は、「積徳(tham bun)のため」で25%であった。また「遊びに来た」(15%)、「訓戒のため」(13%)、「見に来た」(13%)が続いた。─設問4. あなたはどのようにしてワット・パイローンウアに地獄─餓鬼界があることを知りましたか。最も多かった回答は、「以前からよく来ている」で23%であった。この回答のうち、具体的には「子供の頃から来ている」という回答が目立った。次いで「友人・知人から知った」が15%、「家族・親族から知った」が13%であった。また、「近隣に住んでいる」「親戚の家が近くにある」などの土着的な理由は15%であった。他方で、「テレビ」「インターネット」「Facebook」「YouTube」などを通して知ったという回答もみられ、これらの回答を合計すると全体の17%であった。─設問5.あなたは地獄─餓鬼像のある寺院についてどのように感じましたか。最も多かった回答は、「善悪を知ることができた」で22%であった。この「善悪」には「善悪功罪(bap bun khunthot)」「善悪(khwam di khwam chua)」「善因善果悪因悪果(tham di dai di tham chua dai chua)」「罪業(wen kam/bap kam)」「罪(khwam phit)」などが含まれる。次いで多かった回答は、「恐ろしい」で20%を占めた。この回答の多くは「恐ろしい(na klua)」という端的な表現であったが、なかには「為してきた物事への罪を恐れる」「地獄に堕ちることが怖い」などの回答もあり、単にグロテスクな表現に対する視覚的な恐ろしさを感じたという結果にはとどまらない。

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