鹿島美術研究 年報第37号別冊(2020)
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注⑴岡美穂子「ポルトガル人のアジア貿易におけるラッカー塗装工芸品と材料についての史料的考察─シェラック、螺鈿、漆、蒔絵を中心に─」(口頭発表)、東京文化財研究所公開研究会『南蛮漆器の多源性を探る』2017年3月4、5日― 571 ―― 571 ―1622年に列聖され、それを契機に日本でもザビエル像が描かれるようになったと考えられるが、ロドリゲスが当該箇所を執筆したのは列聖の報に接する以前であったのだろう。ザビエルの伝記、肖像はその頃マカオまで伝わっていたとすれば、日本までは目と鼻の先である。そして第三に、上記の逸話が、ザビエルが日本渡航の決意を固め、出発を控えた時期のゴアでの出来事をまとめた章に再編された点に注意したい。ゴンサルヴェスがゴアにおけるザビエルの奇跡として本逸話を取り上げたのに対し、ロドリゲスは日本渡航直前の準備期間の出来事として紹介するという視点の違いがある。神戸市博本成立の背景には、日本にキリスト教をもたらした聖人の肖像というだけでなく、この図像を日本教化の前日譚の象徴とする見方もあったのではないだろうか。⑵スムットニー祐美『茶の湯とイエズス会宣教師─中世の異文化交流─』思文閣出版、2016年。アルド・トリーニ「『日葡辞書』にみえる「茶の湯」の文化」『キリシタンが拓いた日本語文学』明石書店、2017年⑶生田滋・池上岑夫・加藤栄一・長岡新治郎訳『トメ・ピレス 東方諸国記(大航海時代叢書5)』岩波書店、1966年⑷松田毅一・川崎桃太訳『フロイス日本史』全12巻、中央公論社、1977~1980年⑸岩生成一・渋沢元則・中村孝志訳『リンスホーテン 東方案内記(大航海時代叢書8)』岩波書店、1973年⑹土井忠生・森田武・長南実訳『邦訳 日葡辞書』岩波書店、1980年⑺神吉敬三・箭内健次訳『モルガ フィリピン諸島誌(大航海時代叢書7)』岩波書店、1973年⑻佐久間正、会田由、岩生誠一訳『アビラ・ヒロン 日本王国記(大航海時代叢書11)』岩波書店、1965年⑼江馬務、佐野泰彦、土井忠生、浜口乃二雄訳『ジョアン・ロドリーゲス 日本教会史(大航海時代叢書9、10)』岩波書店、1970年⑽村上直次郎『異国叢書 耶蘇会士通信』上巻、駿南社、1927年⑾天野忠幸編『戦国遺文 三好氏編』第2巻、東京堂出版、2014年、862号文書⑿大西廣、太田昌子『安土城の中の「天下」─襖絵を読む』朝日百科日本の歴史別冊16、朝日新聞社、1995年、14頁⒀山本英男「狩野永徳の生涯」『特別展覧会 狩野永徳』京都国立博物館、2007年⒁ J.L. Alvarez-Taladriz著、佐久間正・松田毅一訳「堺の日比屋家に関する一五八六年の新史料」『キリシタン研究』8号、1963年⒂岡本真「堺商人日比屋と一六世紀半ばの対外貿易」『南蛮・紅毛・唐人─一六・一七世紀の東アジア海域』思文閣出版、2013年⒃松山米太郎評註『津田宗及茶湯日記』下巻、津田宗及茶湯日記刊行後援会、1937年、205頁

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