― 617 ―― 617 ―〈日中〉地する菩薩が表される。色紙形には、昔娑婆においてその名を聞いた大士に会うとの語句(③)がある。これは阿閦浄土で香象・白香象大士と対面した際に菩薩が讃じた偈頌であるから、ここはその場面と見える。なおこの晨朝補説に説かれる東方阿閦浄土(妙喜国)や香象・白香象大士、文殊菩薩らは『維摩経』に典拠が求められる。極楽浄土からは様々な浄土を詣でることができ、さらに過去に娑婆で名が知られた大士にも対面できることが具体的に示されている。中央の楼閣上方には多数の飛天が飛び、極楽浄土から多数の菩薩が阿閦浄土を訪れるさまと考えられる。日中は現状奥扉の右2枚と、左側面扉の左端の1枚の合計3枚に表されており、内容から本来の順を復元すると、奥扉右から2枚目が第4面、左側面左端が第5面、奥扉右端が第6面となる。色紙形の讃は以下の通り。第4面(上から順、六時讃では②→③→①)① 「一切[諸]法向寂滅/无[生]无滅无毀壊/[寂静]安[楽]无所得/如是白法[今顕]現」(補説)[不退転行説]」(補説)第6面 「法界體性無差別/森羅萬像即佛身/不見菩提外有法/是故我禮一切塵」(補説)日中讃では、晨朝、他方浄土を詣でた菩薩が極楽浄土へ還り、どのように過ごすかが語られる。自在に食事をとり、迦葉尊者や賢護尊者や様々な賢人に会い、また弥勒菩薩の所説を聴聞するという。補説では同内容を具体的に説き、極楽のきらびやかな情景を描写する。なおここで色紙形に引かれているのはすべて補説の偈頌である。第4面は抽象的な色紙形の語句とは裏腹に、穏やかな極楽の情景を描いている。上方から順に見ていこう。一番上には外を自由に歩く菩薩衆が描かれる。続いて二層の楼閣があり、菩薩とともに二体の僧形が雲に乗り楼閣へ向かい、楼閣内では菩薩が奏楽する。外では地面に座ったり、肘をついて寝そべったりしながら談笑する菩薩の姿が描かれている〔図2〕。その下の色紙形付近には、奏楽、舞踊の菩薩衆と、それを楼閣から眺める菩薩衆が表されている。さらに下をみると、菩薩が一人立つ壇の付近を多数の鳥が歩く。その下には蓮池が表され、池の周りに多数の鳥、菩薩衆が歩く。最下方は千鳥に楼閣が配され、左上の楼閣内には食事の入った鋺らしきものがあり、② 「[貪]欲瞋恚及愚痴/空无相願悉平等/生死涅槃無差別/佛法僧寶亦无二」(補説)③「諸法不自生/亦不従他生/不共不无因/是故説无生」(補説)第5面 「大寶殿裏/一生補處大薩埵/百千萬菩薩衆/前後左右囲繞/晝夜恒大乗/
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