① イクロム夏期セミナー2019― 653 ―― 653 ―⑶会議開催─文化財の保存と科学のためのコミュニケーションと教育スキル枠組みをめぐって比較検討がなされた。このような議論の積み重ねは今後、録音や関連資料の保存という差し迫った課題にとって有益なだけでなく、すでにある他領域のアーカイヴの活動を再検討する機会をもたらすことにもなるだろう。期 間:2019年9月9日~9月20日(12日間)主 催 者:国立大学法人 佐賀大学会 場:佐賀大学有田キャンパス報 告 者:佐賀大学 芸術地域デザイン学部 准教授 石 井 美 恵2019年9月9日から20日の2週間にわたり、イクロム夏期セミナー2019「文化財の保存と科学のためのコミュニケーションと教育スキル」を佐賀大学有田キャンパスにて開催した。イクロムは1959年にユネスコによって設立された非政府機関で正式名称をInternational Center for the Study of the Preservation and Restoration of Cultural Property (文化財保存修復研究国際センター、略称ICCROM)と言う。文化財の保存修復に関する援助を行う国際機関で、保存修復技術者や研究者の養成、研究の促進、助言、勧告に取り組んでおり、本部をローマに置く。Communication and Teaching Skills in Conservation and Scienceは2013年から始められたセミナーで、隔年ごとにローマで夏に開催されてきた。対象は保存修復を指導する立場にいる保存修復家や保存科学者である。セミナーのテーマは「箱の外で考えよう think outside the box」そして「学ぶ視点に立ったデザイン Learner centered design」である。楽しく、効果的で、短いエクササイズ(実習)を授業に取り入れることは学びを促進するのに有効であることが広く知られるようになっており(注1)、日本の大学でも「アクティブラーニング」として導入されている。イクロムのセミナーでは文化遺産の保護や理論を教える際に、気づきや驚きの要素を含んだ学びを取り入れることで、学ぶ視点に立った創造的で活発な授業をするための教育スキルの向上を目指している。文化遺産の教育者の人材養成に特化したプログラムとして世界でも類を見ない。今回のセミナーはイクロムとして初めてゼロ・ウエーストポリシーを採用したこと
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