― 667 ―― 667 ―① 辻佐保子教授旧蔵スライド・デジタルアーカイブ化と目録作成2.2017年度助成期 間:2017年10月~2020年3月報 告 者:学習院大学 文学部 教授 島 尾 新 名古屋大学 文学部 教授 木 俣 元 一 立教大学 文学部 教授 加 藤 磨珠枝 学習院大学資料館 学芸員 冨 田 ゆ り1.プロジェクトの背景『背教者ユリアヌス』や『春の戴冠』等で知られる作家、辻邦生(1925~1999)の資料を所蔵する学習院大学史料館(以下「史料館」と略記)は、邦生の妻であり、初期キリスト教美術、ビザンティン美術、西洋中世美術の研究者として多くの優れた研究を残した辻佐保子(以下「辻」と略記)(1930~2011)が逝去した後、自宅に残された資料を一括して受け入れた(2012~2014)。これらの資料の中には、辻が生前使用した手帳や研究調査用ノートに加え、海外の研究調査先で辻自身が撮影した教会の壁画やモザイク、彫刻等、キリスト教美術及び建築の写真やネガ、カラー・スライド(ポジ)が約2万点ある。これらのスライドは、現在立ち入りできない地域の教会等で撮影された貴重な画像を多数含んでいるほか、1950年代から80年代までを中心に文化遺産の状態を記録する点でも重要な学術的価値をそなえる。他方、これらのスライドは2つの問題点を有する。第一に、スライド映写機の製造中止や人文学分野の研究教育でデジタル・データの使用が一般化したことで、現状では画像の閲覧・使用が困難であること。第二に、スライドはいったん劣化し退色すると復元が不可能なことである。実際、一部の古いスライドはすでに退色が著しく進行し、デジタル・データ化が困難な状態であり、他のスライドも時間の問題である。こうした事態に対応するため、スライドを早急にデジタル・データに変換し、保存する必要性が高い。2.プロジェクトの目的と内容本プロジェクトの目的は、主として以下の3点である。1.辻が生前に研究調査の際に撮影した美術作品及び建築作品等、貴重な文化遺産
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