鹿島美術研究 年報第37号別冊(2020)
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― 668 ―― 668 ―の画像をデジタル・データ化することにより、長期的な保存と多様な形での活用を可能とすること。2.史料館には辻の調査・研究ノート類が大量に保管されており、スライドのデジタル・データベース化により、こうした資料類との照合も容易となり、辻の研究活動に関する理解の深化を補助する資料としての活用と継承を可能とすること。3.将来的にこれらの画像を一般公開することにより、初期キリスト教美術、ビザンティン美術、西洋中世美術の研究に新たな素材を提供し、未来の教育研究活動に資すること。本プロジェクトでは、上記目的の実現に向け基盤を構築する作業として、辻旧蔵の約2万点のスライドのうち、辻自身が研究調査の際に撮影した美術・建築作品を中心とする約1万4千点のスライドをデジタル・データに変換し、整理した上で目録及びデータベースを作成する。3.プロジェクトの実施経過平成29(2017)年10月本助成の決定後、令和2(2020)年3月までのプロジェクトの実施経過の概要は、下記の通りである。平成29(2017)年10月19日:本助成採択が決定した。平成30(2018)年1月:この助成の採択を受け、研究代表者・島尾新(学習院大学)と共同研究者・木俣元一(名古屋大学)、加藤磨珠枝(立教大学)、冨田ゆり(学習院大学史料館)が集まり最初の打ち合わせを行い、学習院大学史料館所蔵のスライドの現物とその状態を確認し、今後の作業方針を検討した。その結果、上記プロジェクトの目的に鑑み、辻自身が海外現地調査で撮影したスライドを優先させるべきと判断し、美術館等で購入したスライドと研究書等から複写したと明らかに判別できるものは、今回のプロジェクトの対象からは差し当たり除外することとした。また、すでに辻本人が、撮影地によりスライドを大まかに地域ごとに分類して計87点の箱に入れ、分類項目名を手書きで記入した紙製仕切りを挟むことで、個々の建造物及びその部分、あるいは所蔵する美術館・博物館ごとに整理しており、さらに各スライドのマウントにも簡単なメモを手書きで残すものがほとんどである。以上より、辻自身による分類・整理体系自体にも学術的価値が存すると判断されるため、本プロジェクトのアーカイブ化及び目録作成に当たってこの分類・整理体系を可能な限り維持することとした。そこで、まず箱を1から87までの通番でナンバリングし、地名・聖堂名等の固有名詞のリストアップを進め、また紙製仕切りと各スライドのマウントの手書きメ

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