鹿島美術研究 年報第38号別冊(2021)
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地蔵菩■像兜跋毘沙門天像資料形状、品質構造、保存状態観音菩■像[保存状態] 両足先欠損。持物亡失。[形状] 円頂。白毫相の有無は不明。耳垂部不貫。三道相は判然としない。裙・覆肩衣・衲衣を着ける。覆肩衣は背部から右肩にかかり右腕をおおう。衲衣は左肩にかかって背部をめぐり右脇腹を通って正面にまわり、再び左肩にかかって左腕をおおう。左手屈臂。右手垂下。直立する。[保存状態] 右肘以下の右脇前半部分、裙裾下端欠損。左手首先欠失。[形状]本体 髻を結う。宝冠を着ける。宝冠は円筒形で上縁が四箇所尖る。列弁文帯の天冠台をあらわす。頭髪平彫り。瞋目、閉口。耳垂部不貫。窄袖衣(もしくは籠手)・大袖衣・鰭袖衣・袴を着ける。衣の裾を裙状に垂らすが、背面分は表甲と一体化する。襟甲・肩甲・表甲を着ける。胸甲は判然としない。表甲上半は周縁を紐一条で囲む。襟甲の下から二条の縦締め紐をあらわす。腹帯を締める。天衣は両肩から腹帯に至り、脚部正面をU字状に渡る。前楯を付け、その上端を帯喰いとする。帯喰いの獣の頭部は覆輪状にあらわす。長靴を履く。左手屈臂。地天女の両掌上に足を置いて立つ。[品質構造] 針葉樹(ヒノキか)。一木造り。素地。/下方の地天女を含む頭体幹部一材製。内刳りは施さない。左手首先矧ぎ付け(丸枘孔が残る)。右腕は肩で矧ぐ(丸枘孔が残る)。[保存状態]本体 左手首先、右腕、各亡失。地天女 下端が大きく欠損する。[形状] 垂髻を結う。天冠台は平帯の上に列弁文帯を重ね、その上に八方に花形をあらわす。頭髪はすべて疎ら彫り。白毫相の有無は不明。耳垂部不貫。三道相は判然としない。条帛・天衣・裙・腰布を着ける。条帛は左肩から右脇腹にかけてあらわし、正面に末端を垂下させる。天衣は両肩をおおい、左右肘でたわみ外側に垂下する。裙(折り返し付き)の打ち合わせは不明。腰布の打ち合わせは裙の正面折り返しに隠れる。左手は屈臂して腹前で手の甲を外に向けて全指を曲げる。右手は垂下し掌を正面に向けて全指をのばす。両足をやや開いて直立する。[品質構造] 針葉樹(ヒノキか)。一木造り。素地。/両手先までを含む全容を一材から彫成したものと思われる。内刳りは施さない。[品質構造] 針葉樹(ヒノキか)。一木造り。素地。/左手首先を除く全容を一材から彫成したものと思われる。内刳りは施さない。地天女 頭頂に髪を結い上げ、他を肩に垂らす。内衣、長袂衣を着ける。両手は肩に上げ、掌を袖から出さずに毘沙門天の両足を支える。― 237 ―― 237 ―

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