(2)賀茂競馬・住吉祭礼図屏風 六曲一双 個人蔵(3)東山・住吉遊楽図屏風 六曲一双 個人蔵(4)豊臣期大坂図屏風 八曲一隻 エッゲンベルク城博物館蔵(5)大坂市街・淀川堤図屏風 八曲一双 大阪城天守閣蔵ことは、先述した表現の特徴と合わせて、アジア美術館本の絵師の出自を想像させる。先行図様の問題や具体的な制作時期とあわせて今後の課題としたい。5.堺を描く屏風最後に、堺市博本とアジア美術館本が、堺の町を描く絵画作品の中でどのように位置付けられるか考えてみたい。堺を屏風絵に描くものには以下の(1)~(7)が挙げられる。(1)厳島・住吉祭礼図屏風 六曲一双 個人蔵堺市博本と同工房による後続作。住吉祭礼図は堺市博本を一隻に圧縮したような構図で、第一・二扇に堺の町を描く。(1)と同様、堺市博本と同工房による後続作。住吉祭礼図は(1)と類似の構図を採るが、住吉・堺間にある安立の町を南端として第一扇に描き、安立の上部に金雲を隔て、瓦葺白壁の建物と杮葺の屋根によって堺を小さくシンボリックに表わす。狩野派非正系の絵師による慶長後期の作とされる(注17)。住吉遊楽図は、住吉大社と住吉浜での潮干狩を描く。住吉祭は描かれない。地理的な位置は無視し、第一扇上隅に金雲に囲んで堺の家並と浜を簡略に描く。堺を描く現存最古の作。大坂の都市風俗図の中に住吉大社・住吉祭・堺の町を描く。景観年代は慶長年間。住吉祭の景観としては現存最古。17世紀中期以降の町絵師による転写とされる(注18)。住吉大社を海側から捉え、右方の堺へ行列が進む構図は堺市博本・アジア美術館本に通じるが、図様の共通は見出せない。両作には描かれない井戸のモチーフが目立つ。大坂の都市風俗図の中に住吉大社・住吉祭・堺の町を描く。右隻第二・三扇中央に住吉大社を北側から描き、住吉祭の神輿が太鼓橋を渡る。金雲を隔て第一・二扇上端に堺の門と家並を簡略に表わす。景観年代は寛永3年から同17年まで、制作年代も同― 297 ―― 297 ―
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