期の所産であったというわけである。その意味で、それぞれ定式化した、梁柱例では第160窟に、光背文様帯例では142・155窟に、龕縁例では第22窟に、台座縁例では第43窟に、波状唐草Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ型や蓮蕾吹き出し文が伴うことは、この推測を裏書きしている。虺龍文系雲唐草の例を、様式別に列挙しておく。様式1: 壁面例:127・135様式2: 梁柱例:26・27・35・36・65・85・88・109・121・141・160 光背文様帯例:83・88・90・142・155 龕縁例:22・39・121 台座縁例:43・45 小龕龕柱例:74壁画の重修以上はパルメットを概観し、文様ごとに様式を分離した。そこで、それぞれの文様に描出箇所を示す窟龕の番号をつけて〔表1〕として以下に掲示し、様式の相異から重修の実態について分析を試みる。〔表1〕の結果が示したように、様式1に限られるのが半パルメット並列唐草、様式2に限られるのが波状唐草Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ型、様式1・2に跨るのが蓮華円花文をめぐるパルメット並列文、蓮蕾吹き出し文、虺龍文系雲唐草である。さて、様式1と様式2の間に時間的な前後関係があることは、重修が証示している。他方、様式論の常として、様式1から様式2への移行は截然としたものではなく、両様式が併存する時間があったことも、あらかじめ想定しておかなければならないだろう。従って、このような観点からすると、様式1・2に跨る文様の存続期間は、最長で様式1と様式2がそれぞれ占めた時間の和とも、最短で両様式の移行期とも考えることができるわけである。そこで、文様の変異幅に注目すると、両様式に跨る文様はいずれも変異幅が大きく、様式1の場合には大小があり、様式2の場合には極めて小さいことが知られる。この相異によって存続期間を推測すると、様式1・2に跨る文様を最長、様式2の所属文様を最短とし、様式1のそれは両者の中間に位置したことになる。もとより、様式1・2に跨る文様の変異幅がもっとも大きいことについては、移行期における様式の不安定さに帰すことも可能である。しかし、先学による窟龕編年を参照するならば、存続時期の長さによって説明するのが穏当であろうと思う。― 372 ―― 372 ―
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