鹿島美術研究 年報第38号別冊(2021)
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は、唐~宋代は57%と高いが、元代15%、明・清代いずれも35%であった。作品の所蔵先地域は中国本土の収蔵が42%、アメリカ23%、日本18%、台湾8%、東南アジア8%。ヨーロッパ1%であった。作品の時代と所蔵先地域を掛け合わせてみると、日本では特に唐~宋代の作品を多く収蔵しており、日本で収蔵が確認された作品の69%は唐~宋代のものであった。これと対照的なのは中国で、明・清代の作品が98%を占めた。両者の中間に位置するのがアメリカで、唐~宋代の作品が13%、元代3%、明代29%、清代54%というバランスを見せている。(台湾、東南アジア、ヨーロッパは収蔵確認数が多くないためここでは論じない。)〔表3〕では現在所蔵館別に分類した。世界の収蔵館で収蔵最多は北京故宮博物院で全体の15%、次いで大阪市立美術館13%、上海博物館9%、メトロポリタン美術館9%、以下南京博物院、天津市芸術博物館、重慶市博物館、天津市歴史博物館と続く。〔表4〕では西崖撮影当時のコレクター別に分類した。全調査対象の内、当時中国にあった作品は276件736点、点数で全体の88%を占める。残りは日本人の蒐集品(B-①)であった。作品数最多のコレクターは上海の蒋孟蘋で中国撮影写真の18%。次いで天津の汪士元17%、北京の張致和11%、清内府10%、完顔景賢9%と続く。現在の所蔵先判明数では、汪士元が最多で以下清内府、金城、蒋孟蘋、完顔景賢の順である。当時清内府所蔵だった作品22件73点の現在の所蔵先をみてみると、台北故宮博物院が8件25点、メトロポリタン美術館が1件7点、東京国立博物館が1件6点、ギメ美術館が1件1点、北京故宮博物院が1件1点(次に述べる)で、10件33点は所在不明である。ちなみに今回の調査対象のうち台北故宮博物院の所蔵になる作品は元清内府所蔵の8件25点が全てであり、当時の民間コレクターの所蔵品は認められなかった。これに対して、現在北京故宮博物院の収蔵品となっていると『図目』で確認できるのは14件44点(注18)。西崖撮影当時、これらは汪士元、楊寿枢、陳漢第、宝熙等民間コレクターの所蔵品であって、清内府の所有物ではなかった。唯一、清内府所蔵だった梁楷「右軍書扇図巻」[1-71]が北京故宮博物院蔵となっている(注19)が、『図目』には掲載されていない。1983年の鑑定調査の後に新たに収蔵されたものかと思われるが詳細は不明である。写真による同定判断の困難について今回の調査において写真画像による比較を行ったが、『図録』『図目』に収録された小さな図版は細部が見えづらく、これらの画像による同定判断には方法論的に困難が― 393 ―― 393 ―

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