鹿島美術研究 年報第38号別冊(2021)
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(左側一段目)聖クインティウスの骨 / 福音書記者聖ルカ / 聖ヨハネの骨 / 聖バルトロメオの腕(?)/ 不明 / 聖母マリアの衣(二段目)教皇クレメンス(?)/ 聖ニコラウス / 聖マルティヌス / 聖ゲオルギウス/ 聖ラウレンティヌスの遺体 / 聖クリストフォロス / 聖トマスの骨 / 聖使徒アンドレの骨(三段目)不明 / 聖ヒラリオの骨 / 聖アントニウスの骨 / 聖ヴィタリウス / 聖ヒュポリトゥスの骨 / 聖マウリツィウスの骨 / 聖シモンの骨 / 聖マシューの骨 / 聖使徒ペテロ(四段目)聖フランチェスコ / 聖ヒエロニムス / 不明 / 我らが聖ドニの上衣 / 我らの主の衣(変則的に記された銘文箇所)我らが聖母の上衣 / 聖カタリナ / 我らが主のスダリウム / 聖アントニウス / 聖ヨハネ(右側一段目)聖コスマス / 聖アブドン/ 聖マグダラのマリアの骨 / 聖カタリナの骨 / 聖…(二段目)聖アグネス / 不明(聖ジェ…ノ)/ 不明(三段目)聖アガタ / 聖アンナ / 聖マリアとマルタ(四段目)聖バルバラ / 聖エリザベス / 聖母マリアのベルト上述の銘文はあくまでも《もう一つのリブレット》のものであり、《リブレット》と同一である確証はないが、両翼の聖遺物の選択が何らかの根拠に基づくものであったとすれば、両容器の非常に近似した特徴に鑑みても、これらも類似していると推定できる。女性聖人が向かって右翼部にまとめられていることもひとつの特徴である。また既存の研究においては《リブレット》両翼の聖遺物は、ポッジ以来一貫して「諸聖人」のものという簡単な言及に留まってきたが、今回の調査によって、少なくとも《もうひとつのリブレット》には、スダリウムや聖母の聖帯・衣などキリストと聖母の聖遺物も含まれていることが明らかになった。特にスダリウムに関しては、キリストの聖遺物でありながら、中央パネルに含まれることがなく、向かって左翼部最下段、さらには変則的に聖ヨハネの聖遺物と共にひとつの枠組みの中に収められている。配置に何らかの意図があると考えるのが妥当ではないだろうか。今回の調査において今まで全く省みられてこなかった《もうひとつのリブレット》の両翼に収められた聖遺物がある程度明らかになった。ヴェネツィアにおける調査の前に試みた《リブレット》の銘文の解読は、本作を収める更なる聖遺物容器《テンピエット》〔図6〕の古― 477 ―― 477 ―

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