E:ハヌマンドゥカ博物館C:プラチャンドラ・バニア氏D:サンゲ・ダス・スレスタ氏②〔図4〕はチベット風の服を纏っている人物図だが、面貌が描かれていないため、未完成の作品と思われる。元々状態がよくない上に、ラミネート加工が施されている。③〔図5〕は緑ターラー、④〔図6〕は観音菩薩が、花と龍を背景に描かれる。背景の花や龍の位置はほぼ同じだが、龍の顔の向きが異なる。バニア氏は、絵画コレクターではなく、画家である。祖母が礼拝用として購入した2点の絵画と、〔図1、2〕の複製画も所有している。獅子に坐した姿で、単色で描かれている。⑤〔図7〕は、菩薩の面貌は、繊細な濃淡の差で描かれている一方で、背景の花や菩薩の着衣では輪郭線が太く濃く、濃淡の差が大きい。1枚の中で描き方が随分と異なる印象を受ける。⑥〔図8〕は剥落が激しいためわかりにくいが、⑤よりも全体的に濃い墨で描かれており、濃淡の差は⑤ほど強くない。スレスタ氏は、ネパール屈指の美術コレクターであり、父のナロタム・ダス・スレスタ氏の代から骨董商として財をなし、多くの美術作品を所有している。ナロタム氏がアナンダムニと親交があり、3点を所有している。⑦〔図9〕は、ヨーロッパの町を思わせる単色による風景画である。⑧〔図10〕は、3人の子供たちを単色で描いた作品である。山の形や子供たちの服装などから、ネパールの風景を描いたものと考えられる。⑨〔図11〕は、ベッドに座るピンク色のサリーを纏った女性が描かれている。インド・ベンガル地方の雑誌を見て描かれたものだという。1941年アナンダムニは、ほかの2名の画家とともに、ネパール初となるカトマンドゥ・アート・ギャラリー(Kathmandu Art Gallery)を設立し、ナロタム氏が、その活動を支援した。そうした経緯からこれらの作品が残されているのだという。⑦の右下隅にある記載「KAG」は、この「カトマンドゥ・アート・ギャラリー取扱作品」を示しており、ギャラリーでの販売用に制作された作品である。旧王宮の建物をつかった博物館。王家の所蔵であった貴重な美術作品や歴史的資料― 557 ―― 557 ―
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