鹿島美術研究 年報第38号別冊(2021)
597/602

期   間:2020年9月~2022年3月報 告 者: 東京藝術大学大学美術館教授、 東京藝術大学美術学部 近現代美術史・大学史研究センター長経緯報告者がセンター長をつとめる東京藝術大学美術学部 近現代美術史・大学史研究センター(通称GACMA、以下GACMAとする)は、前・美術学部教育資料編纂室を改組し、2019年秋に新たに発足した。その目的のひとつは、これまでに蓄積された資料、情報の公開・発信であり、そのための基礎的な研究が急務となった。前教育資料編纂室は、『東京芸術大学百年史』(1982~2003)の刊行のために資料収集活動を行い、刊行後もその活動を維持してきた。そうして収集・蓄積された東京美術学校を中心とする教育資料は、近現代日本の美術教育史と直結する貴重な記録となっている。近代日本美術史の研究に長く携わってきた報告者は、GACMAのセンター長として、東京美術学校関連史料の調査、研究に取り組み、その成果を近代日本美術史研究に活用可能なリソースとして役立てたいと考え、本助成を申請したものである。目標東京美術学校は、官設美術学校として明治20年に設立された。戦後、東京藝術大学に改組し現在に至るが、130年をこえる伝統をもつその歩みは、近現代美術史の中心に位置してきた。岡倉天心による初期美術学校教育の構想からはじまり、戦前期には正木直彦校長、初代東京藝術大学学長の上野直昭らが築いてきた大学史は、単に一大学の歴史にとどまらず、近現代日本美術史と密接な関係を持ってきた。長く教員として在職した作家たち、多くの著名な卒業生たち、あるいはアジア諸地域から留学してきた生徒たちの在校時の動向を把握するには、GACMAが所蔵する歴― 581 ―― 581 ― 古 田   亮1.2020年度Ⅳ.「美術普及振興」研究報告①東京美術学校史料を活用した近代日本美術史に関する基礎研究の整備

元のページ  ../index.html#597

このブックを見る