くっていくことによって、東アジア諸国間における近代美術史研究の再構築を目指すところにある。したがって、東京美術学校に留学した生徒がその後に自国で大きな役割を果たした東アジア(中国、韓国、台湾)で現在研究活動を行っている研究者たちに連絡し、本研究の意義を説き協力を求めた。一方、下半期には本格的な研究の主眼をGACMA所蔵の歴史資料に関するデータベース整備の推進に集中し、『東京芸術大学百年史 東京美術学校篇』第1巻のデジタルデータ公開のための作業を行った。これにともなう作業は本研究助成金なくしてはできなかった。幸いにも、年度末には予定通り第1巻の公開が実現し、東京美術学校関連ではもっとも利用頻度の高い百年史の情報がデジタル化され検索も可能になったことに対して、内外の研究者から賛同の声をいただいた。令和3年度(2021年度)前年度に引き続き『東京芸術大学百年史 東京美術学校篇』第2巻、第3巻の公開のためにデータを整備、著作権調査と墨消し加工を施す作業を進め、年度内には完成し公開に至った。これによって明治20年から昭和27年までわが国の美術史に少なからぬ影響を与えてきた東京美術学校の歴史が広く共有されるという本研究のひとつの目的を果たすことができた。GACMA の公式Webページ「東京芸術大学百年史 東京美術学校篇」<https://gacma.geidai.ac.jp/y100/>がその成果である。次に、この年度の大きな目標に掲げたのが、東京美術学校卒業生、在校生の悉皆調査のためのデータ収集、入力、校正である。この研究は前教育資料編纂室時代にも、正確な把握が出来ていなかった領域であり、この度の研究助成によって後述する通り、飛躍的な成果を挙げることができた。まず、12月に明治時代分が完成、すでにGACMA Webページ「東京美術学校在籍者一覧」で公開されている。<https://gacma.geidai.ac.jp/contents/431-2/>この研究の中心になったのは、本研究の共同研究者であるGACMA学術インストラクター浅井ふたばである。12月21日に開催したGACMAの第1回研究会において「東京美術学校在籍者一覧 ─作成意義と活用にむけて─」と題してその作成意義と活用に関する口頭発表を行い、 昨年度の『年報・紀要』(『東京藝術大学美術学部 近代美術史・大学史研究センター年報・紀要 令和3年度(2021)』)において「研究報告」を執筆し「明治期の東京美術学校─教育課程と修学状況を中心に」にその内容を論文としてまとめた。この他、本研究助成によって、本来ならば数年を要する寄贈資料の整理も進めることができた。その一つが報告者が整理を担当した「南米岳資料」である。「巽画会」― 583 ―― 583 ―
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