注⑴ 埼玉県立近代美術館で2021年9月23日~11月3日、島根県立石見美術館で同年11月27日~22年⑵ 鏡リュウジ「少年神たちの神殿のゆくえ─永遠の少年元型とアイドルたち」、カキン・オクサナ「日本の男性アイドルの文化人類学─「未熟さ」を愛でるファン文化の検討」『ユリイカ』第51巻第18号、2019年、周東美材『「未熟さ」の系譜 宝塚からジャニーズまで』新潮社、2022年、ベンジャミン・ウチヤマ「少年飛行兵」『日本のカーニバル戦争 総力戦下の大衆文化1937-1945』みすず書房、2022年など。⑶ 石田美紀「男性を見ることを語る」『美男におわす』青幻舎、2021年⑷ 大谷省吾「歴史画」解説『戦争と美術 1937-1945』国書刊行会、2007年⑸ 「Oh!マツリ☆ゴト 昭和・平成のヒーロー&ピーポー」展(兵庫県立美術館、2019年)は、戦時下から戦後へと引き継がれたヒーローと、名もなき群衆としての「戦う男」の様相を示したが、ここに容姿が整えられた男性像はほとんど見られない。少年向けアニメ、マンガで「美形キャラ」が注目されるのは1970年代からだった。⑹ ここに引く作家の発言は筆者が行ったヒアリングにもとづく。木村、唐仁原、吉田へのヒアリングは展覧会準備中の2021年5月と終了後の2022年10月に、市川には2022年10月に実施した。⑺ 「iroha CONTENTS」掲載インタビュー、2022年3月15日(https://iroha-contents.com/環境を整えたといえよう。ところで稚児や若衆などの少年に向けられる眼差しは、成人男性へのそれとは異なるものだった(注9)ことには注意が必要だ。庇護されるべき未熟な少年が愛玩の対象となっても、男性の優位が揺らぐことはない。また少年は、女性にとっても安心して愛でることができる存在でもある。明治以降、歴史や物語というフィルターを通さない成人男性が「美男」として描かれる機会は、ほぼなくなった。例えばモダンガールを描いた「美人画」は多数あるが、「美男画」として描かれたモダンボーイは皆無である(注10)。近代の男性像と女性像の比較にはさらに詳しい検証が必要だが、明治から昭和にかけて、成人男性が「愛しい美男」として描かれ、見られることが巧みに回避されてきたのは確かである。最後に、本稿では描き手の性別について触れられなかったが、長らく女性画家に男性像を発表する機会が与えられなかった(注11)ことも、「愛しい美男」が描かれなかった要因の一つであろう。以上、本研究では、「美しい人」として描かれた男性像、すなわち「美男画」の歴史と問題点について考察した。主題の大きさに対して考察の対象が不足しており、ラフスケッチのような観測になったが、「美男におわす」展を契機に男性像の研究が盛んになり、因襲を破った多様な作品が生まれることを期待している。1月24日に開催。それぞれ11,714人、2,767人の観覧があった。― 138 ―― 138 ―
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