な線で描かれ円錐状であることがわかる。また部分図が墨一色で描かれ、墨の濃淡による表現を試みようとしていたことが見えてくる。№8は全体を不透明な水色で描き部分的に緑色を帯びている。短時間で描かれたようで特徴のみをとらえて描いている。№9〔図4〕の上部にこの種の卵塊が描かれている。卵塊は淡い水色で描かれ透明感があり、輪郭線も薄く描かれている。下部に全体図があるが、点描や筆の擦れを使って描いている。また突起部分は繊細な曲線で描かれ立体的である。№10〔図5〕は橙色、黄色、青色といった鮮やかな縦線で描かれている。また突起物について「横筋ハ顕微鏡ニテ/視ル時ハ濃葛色ナリ」とのメモ書きがある。よって、顕微鏡で色を確認して描いていたことが判明した。部分図は突起物を拡大し水彩で細部まで描いていた。№12は体色を透明感のある褐色で着色し、さらに不透明な褐色でやや大きめな点描を描いている。「点ニ青ミヲ持タスコト」というメモ書きがあり、清書の際に青みをもたせるということであろう。№15の体色は赤色だがごく小さな円で網目状に描くことにより、外套膜が細かく網目状になっていることを表現している。また不透明な白色で不規則に描くことにより、不透明な白色斑が散在する■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■の特徴をあらわしている。突起物についても橙から赤のグラデーションを巧みに使用することにより、更に立体的に表現することに成功している。№16は遊泳姿勢が描かれているためか、大まかな描写と精緻に細部まで書き込まれた描写が混在している。「支線元ノ方淡シ」「アラスギル」「細クスベシ」などといったメモ書きも多く、鉛筆での部分図も見られる。角度が異なる部分図もあることから清書のために多くの情報を残そうとしていることがわかる。№17は体色が白色であるため和紙の色を利用している。多数の褐色の線を連続して描いているが線に強弱をつけ立体的に描いている。橙色の縁辺の斑紋や、突起物に不透明な白色斑を描くことでその特徴を表現している。№19は褐色がかった体色ではあるが中央部が濃い褐色で描かれ深くへこんでいる様子がわかる。不透明な水色、緑色、橙色で縁取りが描かれ、突起部分の描写には繊細な線が描き加えられることによって更に立体的に表現されている。№23は体表の全体が濃い褐色であり、中央部分はさらに濃い褐色で描かれ、黒色の点描で斑点が表現されている。メモ書きには「中央ノ色サシ濃過グ斑点ノ判明スル度ニ直スベシ」とあるため、清書する際に修正する点であろう。― 188 ―― 188 ―
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