注⑴ 德永祐樹 「十三世紀のサン=ドニ修道院付属聖堂改築:トランセプトにおける『天上のエル⑵ Michael T. Davis and Linda Elaine Neagley, “Mechanics and Meaning: Plan Design at Saint-Urbain, Troyes and Saint-Ouen, Rouen,” ■■■■■ Vol. 39, no. 2, 2000, pp. 161-182⑶ 安發和彰 「モーガン図書館のベアトゥス写本挿絵(MS m. 644)《天上のエルサレム》(ff. 222v.-223)について」 『東北芸術工科大学紀要』第9号、東北芸術工科大学、2002年、6-18頁結連想し、サン=ドニの着想源としたことは想像に難くないだろう。13世紀のサン=ドニ聖堂改築において、レオンのサン・イシドーロ聖堂、パンテオンが、建築的着想源となった可能性を提示し、両者が王家の霊廟として担った機能の類似性を指摘することによって、ブランシュを介したカスティーリャ王国の影響を重要視するという解釈を補強した。また、サン・イシドーロ聖堂パンテオンを建築的着想源と考えることで、後期古代以来、中世を通して受け継がれてきた霊廟建築の伝統の中に、サン=ドニを位置付けることができるだろう。パンテオンの建築の研究においては、1940年代のアンドレ・グラバールの研究以来、このような建築における図像学的解釈が提示されてきた(注14)。それは、中世建築における原型と模倣の問題を論じたクラウトハイマーの古典的な研究が1942年に発表されたのと時を同じくしている。近年、図像学的手法をテーマに国際会議が開かれるなど(注15)、クラウトハイマー再評価の風潮が高まっている(注16)。本研究では、図像学的手法の一つのケーススタディとして、ゴシック建築における厳密な様式発展の中で語られることの多い13世紀のサン=ドニ聖堂改築に、新たな視点をもたらすことを目指した。今後の研究においては、パンテオンの解釈にとって重要となる壁画の図像プログラムにおける『ベアトゥス黙示録註解書』の写本挿絵の影響についての調査、そしてサン=ドニやパンテオンといった王家の霊廟が「天上のエルサレム」を参照しているとすれば、どのような意味を持つのかという課題に取り組み、図像学的手法の可能性を探ってゆきたい。最後になりましたが、本研究のご推薦を賜りました名古屋大学教授、木俣元一先生、恩師である慶應義大学教授、遠山公一先生に深く御礼を申し上げます。サレム』の参照」 『美術史』第68(1)号、美術史学会、2018年、138-152頁― 256 ―― 256 ―
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