2.出品作品の追跡2-1.作品リストの再編に向けて「マネとポスト印象主義の画家」展に出品された作品を跡づけて画像を特定し、更新した情報で作品リストの再構成を試みたい。最も信頼性の高い第三版の同展出品目録には、展覧会番号1から206までの油彩画・水彩画・パステル画・素描のデータが展示室ごとに記載される。途中で展示替え用とおぼしき5点の情報が併記され、56番目が抜け落ちているため、この目録に収録された絵画作品は210点となる。さらに末尾には、最後の展示室にまとめて陳列された小型の彫刻や陶器からなる22点が掲載された。これにくわえて、同時代評や関係者の発言から、出品目録には記されなかった展示作品が15点は存在したことを確認できる。以上の247点(注16)のデータを、各芸術家のカタログ・レゾネ(注17)、現所蔵先が公開する作品の来歴や展覧会歴、オークションの記録、同時代評、同展開催にかかわったブルームズベリー・グループやフライの知人らの発言、来歴に含まれない個々の旧蔵者情報などと詳細に照合した。その結果、125点の作品に関して情報を更新し、画像を特定することができた。このうち「マネとポスト印象主義の画家」展に出品された事実が実際に確認できた103点を抜粋して、現時点で最も確度が高いと思われる一覧を作成し、本稿の添付資料とする〔表1〕。作品のタイトルや館名の表記については現所蔵先の情報を最優先とし、個人蔵などで正式な表記が不明の場合には、カタログ・レゾネやオークションの売却記録から採用した。それぞれの根拠の参照元は各データの末尾に記号で示し、「推定」が含まれる場合には作品のタイトルを[ ]で囲んだ。この一連の調査を通じて、あらたに15点の作品を同定することができた。その内訳は、セザンヌ2点(exh. no. 48、51)〔図7〕、ゴーギャン6点(exh. no. 31、44、44A、80、80A、89)〔図10〕、ヴァロットン4点(exh. no. 102、129、152、154)〔図11〕、ドニ1点(exh. no. 91)、マルケ1点(exh. no. 108)〔図9〕、ルドン1点(exh. no. 136)となる。いずれの追跡調査の進展も、カタログ・レゾネや所蔵先による来歴・展覧会歴の調査状況と大きく連動する側面があることは否めない。したがって、将来的にカタログ・レゾネの編纂や充実化が見込まれる場合には、今後さらに出品作品の同定が進むものと考えられる。また、上記とは異なる15点に関して、先行研究の説を一部修正する必要のあることが分かった。とくに重要な一点について、次節で取り上げたい。― 27 ―― 27 ―
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