蓋裏は100種の薬草と虫が、その名称と共にぎっしりと精緻に描かれている〔図3〕。一文字の大きさが1.5ミリ程度という細密さで記された名称を列記すると以下の通りである(原文ママ、番号は報告者が便宜的に振ったもの)。抽斗の中には、数多くの内容品が残る。先述の目録と対照することができ、現存するものが多数ある。特に興味深いのは、渋紙製の薬袋、金唐革の文様を写したような彫金による美しい絵替わりの銀製合子(注4)、硝子製の瓶といった薬剤に関するものである。残念ながら現在は中身を伴っていないが、目録等により判明する薬品名を以後の考察のために列記する(抽斗の名称は目録に準ずる)。[抽斗イ(薬袋)]葛根、桂枝、柴胡、黄連、半夏、石膏、厚朴、甘草、蘇子、麻黄、芍薬、黄芩、大黄、桔梗、茯苓、枳実、乾姜、蒼朮[抽斗ロ(薬袋)]龍骨、猪苓、莪朮、荊芥、姜活、木香、縮砂、滑石、黄柏、薄荷、紅花、檳榔、白朮、牡蛎、沢瀉、三稜、防風、連翹、藿香、烏頭、橘皮、梔子、芎藭、知母、黄耆、蔞根[抽斗ホ(銀製合子)]鷓鴣、真根、麦門、附子、大棗、粳米、杏仁、桃仁、芒硝、五味子、乾地黄、橄1.括婁根、2.杜衡、3.大棗、4.石榴皮、5.蒲公、6.生薑、7.黄耆、8.荊芥、9.牽牛子、10.防風、11.艾葉、12.人参、13.合歓、14.山葵、15.白頭翁、16.薄荷、17.地楡、18.竹、19.款冬花、20.夏枯草、21.李根皮、22.知母、23.枇杷葉、24.柴胡、25.仙金藤、26.皀莢、27.木瓜、28.沢瀉、29.酢漿、30.葛根、31.石葦、32.枳實、33.芍薬、34.地黄、35.蒼朮、36.百部根、37.木香、38.黄芩、39.若蘭、40.白及、41.川芎、42.螳螂、43.紫菀、44.前胡、45.附子、46.半夏、47.山茱萸、48.白芷、49.石薢、50.藁本、51.龍膽、52.牡丹、53.貫衆、54.射干、55.柿、56.稀薟、57.木通、58.攀倒甑、59.香附子、60.釣藤鉤、61.苦辛、62.忍冬、63.麦門冬、64.麻黄、65.黄蓮、66.蘭香、67.山梔子、68.舛麻、69.商陸、70.玄参、71.蛍、72.鬱金、73.山枡、74.常山、75.草薢、76.茵陳、77.木賊、78.粟、79.車前子、80.白苣、81.百合、82.紅花、83.酸棗、84.龍胆、85.稲、86.石龍芮、87.澤蘭、88.肉桂、89.天門冬、90.大豆、91.露蜂房、92.土茯苓、93.葈茸、94.芫花、95.麦、96.大戟、97.蝉蛻、98.胡椒、99.桔梗、100.石竹「薬箪笥」に附属する目録「大御薬籠中品類目録」に「百艸御箪笥」の貼り紙があるように、この蓋裏の意匠による名称が付されていた様子もわかる(ただし売立時の作品名は「裂模様銀金具薬籠箪笥」)。― 436 ―― 436 ―
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