「〈挿絵〉新聞・雑誌・書籍など印刷物で、文章の理解を助けたり、興味をもたせたりするために入れる手描きの絵。/〈カット〉印刷物の紙面に、空所の埋め草あるいはアクセントとして、または見出しの上部などに入れる小型の絵。」同書、103頁。注⑴ 西村美香「プラトン社の雑誌デザイン」『モダニズム出版社の光芒』淡交社、2000年、140-144頁。⑵ 本稿で用いる「挿絵」「カット」という言葉については、以下の西村氏の解釈にのっとって使⑷ 山梨俊夫「『白樺』の熱と波」京都文化博物館他編『『白樺』誕生100年 白樺派の愛した美術』⑶ 山名文夫「恐れつつ愛する 20年遠ざけた禁断の書─『ビアズリー画集』」、連載「一冊の本」⑸ 「挿画に就て」、「カットに就て」(『白樺』第1巻第1号、1910年)52-53頁。⑹ 前掲書、山名。⑺ 同書⑻ 同書⑼ 同書⑽ 前掲書、西村、110頁。⑾ 津金澤聡廣「雑誌『女性』と中山太陽堂およびプラトン社について─解説─」、鶴見俊輔監修⑿ 山本洋「“関西発”文壇研究の宝庫『女性』─文学編解説─」、同書、58-59頁。⒀ 山名文夫『体験的デザイン史』ダヴィッド社、1971年、5頁。⒁ 京都工芸高等学校図案科では、アール・ヌーヴォーの図案集などが教材として使用されていたことが知られている。京都工芸繊維大学図書館に問い合わせたところ、山の在学当時、同校にてビアズリーの作品や画集が図案科の教材として使用されていた形跡はなく、また、同校付属図書館にビアズリー関連の書籍が所蔵されたのはもっと後の年代であるとの回答をいただい山のカットでは、点線による凹凸の表現、曲線の多様などの技法におけるビアズリー作品からの影響が見られる。また、主題となる女性の描き方に関しても、装飾的な表現にこだわった山名と比較すると、第3巻第3号の扉絵のような異様に引き延ばされた指を持つ人物など、ややグロテスクな造形が特徴的である。一方で山名の作品では、植物と一体化した女性の顔など、本来であれば奇怪なはずの主題も、軽やかな線と女性の顔に見られる穏やかな表情とが相まって、頁を彩る装飾模様として機能している点に、両者の受容の違いがある。本稿では、山と山名のビアズリー受容の特徴について検証したが、今回の調査結果を踏まえ、今後は『女性』に掲載されたカットのそれぞれの画風の変遷を調査し、最終的に彼らがビアズリーから学んだもの/学ばなかったものについて明らかにしたい。い分ける。第50回『朝日新聞』1962年1月4日夕刊。読売新聞大阪本社、2009年、8頁。『雑誌『女性』』第48巻、日本図書センター、1993年、7-8頁。― 508 ―― 508 ―
元のページ ../index.html#517