Ⅱ.「美術に関する国際交流援助」研究報告⑴ 海外派遣① パペットからフィグーアへ、人形からパペットへ─ 19世紀末から20世紀初頭におけるドイツおよび日本の 人形劇の美学的位置づけの比較研究─期 間:2022年2月1日~4月2日(61日間)派 遣 国:ドイツ連邦共和国報 告 者:日本学術振興会 特別研究員(PD、東京藝術大学) 山 口 遥 子研究の概要19世紀末から20世紀初めにドイツと日本でみられた美術と人形劇の相互関係を主題として、ミュンヘンの中央美術史研究所(Zentralinstitut für Kunstgeschichte、以下ZI)で二ヶ月間の研究活動を行った。ミュンヘンは世紀転換期に様々な美術運動を生んだ土地であると同時に、ドイツ初の人形劇常設劇場を生んだ土地でもあり、19世紀末から現在に至るまでヨーロッパにおける芸術的人形劇の中心的都市の一つである。私の研究の主題は美術史・文化史・演劇・美学などの領域にまたがるため、書籍雑誌等刊行物のみならず、人形など多くの現物資料を確認する必要があったが、中央美術史研究所から散歩ついでに少し足を伸ばすだけで、レンバッハハウスなど20世紀美術にかんする美術館、膨大な人形劇コレクションを擁するミュンヘン博物館(Münchner Stadtmuseum)、ドイツ演劇博物館(Deutsches Theatermuseum)、ミュンヘン大学図書館、ミュンヘン国立図書館、さらには1858年に設立されミュンヘンの芸術的人形劇の第一世代を築いていまなお現役の「ミュンヘンマリオネット劇場」(Münchner Marionettentheater)などがあり、参考資料には事欠かない。これほど充実した環境で自在に調査を行うことができたのはミュンヘンという都市ならではの幸いだった。私がフェローとして二ヶ月間所属したZIは、大学を除いてはドイツ唯一の美術史研究機関であり、69万点を超える資料を所蔵する世界有数規模の美術史資料図書館を― 519 ―― 519 ―1.2021年度助成
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