鹿島美術研究様 年報第39号別冊(2022)
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"A Turning Point in Japanese and German Puppetry: The Impact of Artists"First, I would like to share with you the motivation for my research at the Zentral Institut. My ultimate goal is to describe the history of the formation of modern puppet theater in Japan within the global context of puppetry. And I believe that the “Marionettentheater Münchner Künstler," which was active in Munich from 1906 to 1934, was deeply involved in the formation of modern Japanese puppet theater. My interest in this theater brought me to Munich even during this difficult period of the を実践した。日本の20世紀人形劇成立にはミュンヘン人形劇が深く関わっているのである。「ミュンヘン芸術家人形劇場」では、ヨゼフ・ヴァッカーレやイグナチオ・タシュナー、オラフ・ガルブランソン、ユリウス・ディーツなど当時のミュンヘン美術界を代表する美術家が協働した。美術家にとって人形劇は収入源であると同時に楽しい腕試しの場となり、人形劇にとって美術家の参与は新しい観客層の開拓を促すと同時にジャンル自体の格上げを促した。こうした美術家についての資料を日本で得るのは(ましてやメインの仕事ではなく、人形作家としての仕事について知るのは)難しい。例えばヴァッカーレによる人形はミュンヘン博物館にほぼ完全な状態で全て保管されており、また後年ナチスお抱えの彫刻家となってからの仕事についてはZIに関連書籍が複数所蔵され、さらにはミュンヘンの街中でもヴァッカーレの手による巨大彫刻をよく目にしたのだが、日本の図書館では彼についての資料をほとんど集めることができなかった。彼ら人形劇に関与した美術家たちがミュンヘンの美術界でもともとどのような位置にあったのか、人形劇場と実際どのように共に仕事をしていたのか(人形デザイン、彫刻、背景美術、装飾美術、小物、劇場美術、宣伝美術制作等々を実際どういった経緯でどの程度行っていたのか)、またその仕事は同時代の美術界や観客にどう受けとめられていたのか、こうしたことはミュンヘンに来て初めて、ZI所蔵の膨大な書物・雑誌や、その他の機関に所蔵されていた未公開書簡などを通じて、知ることができた。こうした貴重な機会を与えて下さり、また渡航中もさまざまなサポートをして下さった東京藝術大学の佐藤直樹先生、立命館大学の仲間裕子先生、そしてZIに改めて御礼申し上げます。研究発表の全文― 521 ―― 521 ―

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