鹿島美術研究様 年報第39号別冊(2022)
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⑵ 会議開催① 国際シンポジウム「風のイメージ世界」人形劇表現の多様さと同じく、彼らが人形劇に託した願いもそれぞれ異なっていたはずです。今後に残された課題は、ミュンヘンに良い状態で残された人形の数々を検証し、当時の人形劇をめぐる言説をより広く調査することで、20世紀初頭の異文化交渉から生まれたこの新しい芸術に美術家達が託した期待がなんであったのかを、明らかにすることです。ZIでは20世紀初頭のミュンヘン美術界について、日本では入手できない多くの資料を入手することができました。ミュンヘン博物館では、美術家と人形劇団の間で交わされた多くの書簡や、奇跡的に保存状態の良い人形を多く見つけることができました。これらの資料について、今後さらに詳しく調査していきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。期   間:2022年3月26日~27日(2日間)主 催 者:国際シンポジウム「風のイメージ世界」実行委員会会   場:オンライン開催(Zoomウェビナー)報 告 者: 関西大学 東西学術研究所 客員研究員、 関西大学 名誉教授          蜷 川 順 子会議の経過および研究成果本国際シンポジウムには、①テーマ設定、②報告者の構成、③実施方式、④準備方式の点で、従来にない特色があった。以下では、この順に会議の経過および研究成果を述べる。① テーマ設定本シンポジウム開催のきっかけは、ベルギーのカトリック・ルーヴェン大学美術史学教授バーバラ・バート氏の著作『プネウマと中世と近世初期の視覚媒体』(原題直訳)を『風のイコノロジー 風、ルーアハ、受肉、匂い、しみ、動き、カイロス、クモの巣、静けさについてのエッセイ集』(邦題)という訳書として三元社から出版するにあたり、訳書刊行に寄せたバート氏自身の希望にあった。それは、バート氏自身がヨーロッパで展開している文化人類学的なイコノロジーの方法、あるいはイコー― 533 ―― 533 ―

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