時もあり、黄金率(1:1.618)や2、3などを基準とすることもある。また対角線もよく利用され、そのほか斜線、曲線、放射線、三角形、菱形、円形なども使われる。近景から遠景を描く場合は遠近法や透視図法が用いられる。もちろん、東洋の仏教絵画の構図を検討する際に西洋絵画と同じ考え方では分析できない。むしろ本研究では、取り上げる浄土図に構成上の基準となる線があるかどうかを、画面上に線を引きながら検討した。つまり画面に分割線を引いて、各モチーフが規則性を持って配置されているかどうかを判定していった。すると、中国の浄土図においては、基本的には画面を縦横2等分する水平線・垂直線が交わる点、つまり画面の中心点が基本となること、さらに4等分線、8等分線、対角線とモチーフの配置に規則があることがわかった。そこで次章では、中国の浄土図を6世紀から8世紀まで取りあげ、その構図分析の結果を記してみたい。3 浄土図の構図分析による知見ここでは、調査を行った中から、中国・南北朝時代の6世紀から盛唐8世紀までの浄土図6点をとりあげて構図分析を行う。3-1 最初期の浄土図の構図3-1-1 麦積山石窟127号窟 西方浄土変(西魏、540年代)〔図2〕〔図2〕は左右の端が不明瞭であるため、中心を如来像とし、左右対称となるように任意の区画(外枠)を設定した。そのため、向かって左の端に画面が続いている。まず画面垂直(縦線)の中心線Aと水平(横線)の中心線Bによる中心点を求めると、中尊阿弥陀如来の台座下部にあたり、上4分の1の線G上が阿弥陀如来の頸部となる。さらに対角線C・D、また画面縦4分の1の線E・F、横4分の1の線G・Hを引く。すると上部から2分の1の線Bまでが楼閣と阿弥陀如来・両脇侍となる。また線E・Fで囲まれる画面全体の半分の面積に、阿弥陀如来と両脇侍、菩薩・聖衆たちが描かれ、線E・Fから外側に左右の楼閣が配されている。対角線C・D、またそれと平行の対角線E-H、F-H上に、聖衆が阿弥陀如来に向かって並んでいることがわかる。敷物もこの対角線に沿っている。また楼閣も対角線A-Bの角度にほぼ沿っている。このように本図では、画面の縦横は、中心線や4分の1の線、対角線を基準として各景観が区分され、わずかに遠近表現もあるといえる。楼閣の高さと阿弥陀如来・菩薩の背丈とのバランスも少しは考慮され、また聖衆や楼閣は中心の阿弥陀如来に集約― 71 ―― 71 ―
元のページ ../index.html#80