付記漢詩の訓読、意訳は、門脇むつみ氏主催の研究会(JSPS科研費・基盤研究C「伊藤若冲作品の画と賛─禅僧賛の読解・禅僧との交流を踏まえた作品と伝記の研究─」2020~22年度、同氏代表)において、芳澤勝弘先生にご教示いただいた。また、作品調査にあたり、草堂寺ご住職様、和歌山県立博物館・新井美那氏、千葉市美術館・松岡まり江氏、丸市美術・瀧北敬久氏、大阪大学准教授・門脇むつみ氏、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程・池田泉氏にご協力いただいた。記して感謝申し上げる。脱稿後、《鸚鵡図》と類似する止まり木が、谷文晁編『書画甲観』掲載の唐・黄筌画に見られることを、池田泉氏よりご教示いただいた。止まり木に止まっているのは叭々鳥らしき鳥だが、若冲は同様の作品に倣って《鸚鵡図》を制作したと考えられる。今後これを踏まえて稿を改めたい。観音像をめぐって」『黄檗文華』139号,黄檗文化研究所,2020年,pp. 60-61菅清璣『奇観名話』(宝暦8年〈1758〉刊)に「漢名乾皐、又鸚哥。是白鸚鵡なり。喙薄紅、とさかあり蓮華のごとし」とある。小野蘭山『本草綱目啓蒙』巻四十五(1803~06年刊)に「頂上ノ冠毛上ニ聳ユ、喜ブ時ハ披キテ菊花ノ開ケルガ如ク、蓮花ノ如クシテ內ノ黄赤色アラハル、コレヲ開花と名ケ亦芙蓉冠ト名クルコト広東新語ニ詳ナリ、俗にレンゲ毛ト云」とある。『昨非集』巻上(宝暦11年〈1761〉刊)収録。『小雲棲詠物詩』巻上(寛政2年〈1790〉刊)再録時の割注「宝暦戊寅の頃、蛮舶、種種の鸚哥を送致す。今宮祇園の神事に際して肆上に呈拽す。観る者簇擁す。余偶たま斯に感有りと云う。」によって、詩作の背景がわかる。高橋忠彦著・今井佳子編『文選〈賦篇二〉』新書漢語体系26,明治書院,2004年,pp. 60-66鈴木虎雄・黒川洋一訳注『杜詩』第6冊,岩波文庫,1966年,pp. 233-235。田口暢穂「鸚鵡詩話」『鶴見大学紀要』第21号,第一部国語・国文学篇,鶴見大学,1984年,pp. 283-311高橋博巳編『淇園詩文集』近世儒家文集集成第9巻,ぺりかん社,1986年画選本の古賀侗庵(1788~1847)による賛もまた、「宮中に馴養す、雪衣娘。曽て阿環と与に玉皇に事う。是れ金籠に寵眷を蒙ると雖も、応に忘れ難かるべし、隴山に向かって翔ることを」(原漢文、芳澤勝弘氏による訓読)と、宮中で飼いならされていた雪衣娘という鸚鵡は、阿環こと楊貴妃とともに玄宗帝につかえ、金の籠に入れられ寵愛されていたが、隴山は忘れ難く、飛んで帰りたかったことだろうと、隴山への望郷が詠まれている。絵の制作時期よりも下る後賛だが、当時の鸚鵡観を知ることができる。拙稿「伊藤若冲の動植綵絵 荘厳の花鳥画」『豊穣の日本美術─小林忠先生古希記念論集』藝華書院,2012年,pp. 224-229―188――188―
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