鹿島美術研究様 年報第40号別冊(2023)
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注⑴ 樹種同定に関しては「令和4年度科学研究費補助金基礎研究(B)「東アジア及び東南アジアに意される他、観音菩薩の造像傾向としては、十一面観音の比率が高い東三河地域と千手観音の比率が高い静岡県中部地域に対して、聖観音の比率が高く十一面観音と千手観音が一定程度伝わる遠州地域は、東西両地域の中間的様相を呈しているといえる。本研究で見出した傾向は、遠州地域の仏教文化圏を総論的に捉えたに過ぎず、個々の課題を積み残した状況である。さらなる実地調査で新たな作例を見出し、データベースの更新を図りながら、全国各地の事例との比較を継続して本研究の精度を高めていく。また、その根拠となる地域史に関する情報の収集を行い、分析・考察に努めたい。なお、本研究の成果は、浜松市美術館企画展「みほとけのキセキⅡ─遠州・三河のしられざる祈り─」(令和5年〈2023〉10月14日~12月3日)の展示を通して、広く来館者に周知したい。おける木彫像の樹種と用材観に関する調査研究」(研究代表者:岩佐光晴)の成果」による。⑵ 構造や樹種に関しては、『隣海院木造阿弥陀如来坐像修理報告書』(有限会社宗教美術工房、2008年、pp. 1-2)による。⑶ 岩佐光晴「遠州地域に伝わる定朝様式の仏像」『みほとけのキセキ─遠州・三河の寺宝展─』浜松市美術館、2021年、pp. 16-23⑷ 上川通夫「平安末期の山林寺院と地域社会─三河国の秘められた文字史料探究─」『愛知県立大学文化財研究所年報⑶』、愛知県立大学文字文化研究所、2010年、pp. 7-11⑸ 前掲論文⑶、岩佐、2021年、pp. 16-23⑹ 上川通夫「中世山寺の基本構造─三河・尾張の例から─」『愛知県立大学日本文化学部論集第6号 歴史文化学科編』愛知県立大学日本文化学部、2014年、pp. 8-14⑺ 高梨純次「己高山の草創」『近江の古仏』思文閣出版、2014年、pp. 124-138⑻ 大木昌「北上川の舟運と流域生活圏の形成」『国際学研究』(52)明治学院大学、2018年、pp. 23-37⑼ 山岸公基「時代を読み解く鍵─普門寺の平安時代の仏像から─」(『みほとけのキセキ─遠州・三河の寺宝展─』講演会)、2021年、浜松市美術館⑽ 島口直弥「みほとけのキセキ─遠州・三河の仏像とその魅力─」『みほとけのキセキ─遠州・三河の寺宝展─』浜松市美術館、2021年、pp. 91-93⑾ 山岸公基「普門寺の仏像と東三河の古彫刻」『普門寺旧境内─総合調査編─』(豊橋市埋蔵文化財調査報告書第141集)豊橋市教育委員会、2016年、pp. 276-311⑿ 前掲論文⑷、上川、2010年、pp. 7-11⒀ 山岸公基「第3章作品解説229薬師如来坐像」『愛知県史別編文化財3彫刻』愛知県史編さん委員会、2013年、pp. 598-599⒁ 山岸公基・塩澤寛樹・堀恭子「寛元在銘の静岡・秋葉寺(愛知・巣山区伝来金剛力士立像)」『愛知県史研究』(第9号)、2005年、pp. 143-153⒂ 東三河地域の普門寺、林光寺、東観音寺に伝わる半丈六の坐像が遠州地域では見られない点は―19――19―

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