し、それらを全体的かつ細部からも評価し、それぞれの個々の多様性の程度を把握し、その理想形、より正確にはこうした特徴の各タイプを知覚するに至ります。これらの部分的な類型[type]を取り纏め、私が研究している人種に特有のあらゆる美しさが結集されたような、統一化されたタイプを私の心の中で構成するのです。美しさは特別な民族のものではなく、普遍的[ubiquité]なものであるという考えを芸術の世界で提唱してきました。どの民族にも、他の民族とは異なる美しさがあります。[…中略…]彼[黒人モデル(筆者注)]は、エチオピア民族の本質的な道徳的かつ知的特徴が調和したバランスで反映されている形、特徴、人相を自分の中に兼ね備えている人です。このようにして種族の理想的なタイプを考えた後(再現するために記憶だけを頼りにするのではありません)、私は研究して比較した個体の中から、その種族の特別な美の組み合わせを最高度に表現している個体を探し、この個体を正確で特徴的な彫刻作品で表現することにしました。[…中略…]型取りは肉体と人相を消し去ってしまいます。私はこのモデルを彫刻で再現していますが、芸術的な感覚から科学的な正確さをおろそかにしていけません。コンパスは、幾何学的かつ解剖学的な原理に基づいて規則的に扱われなければ、不十分なものになってしまいます。例えば、耳の中心をとって、あごから後頭部までの中央線の輪郭を決定し[…中略…]測定して決定します。私が学会に提供することを光栄に思っている3つの胸像は、この原則に従って制作されたものです。黄色人種の代表としてモンゴルのタルタル人を、黒人人種の代表としてスーダンのニグロを、そして白人種の代表としてアルジェリアの砂漠の境界で孤立している部族、エル・アグアトのアラブ人を選びました。ギリシャ人やガリア人のタイプも、白人の代表として非常に美しいものです。[…中略…]私の民族誌学ギャラリーをすべてこの場所に運ぶことができないのは残念ですが、学会の仲間には、私を訪問してくれる人はいつでも私のスタジオに歓迎すると伝えておきます(注8)。」ここでは特に3つの点に着目したい。1つめは、絶対的な理想美ではなく、「普遍的な美」という概念を提唱していること、次に芸術的感覚と「科学的な正確さ」が幾何学的及び解剖学的な論理に基づいて並立しうると考えていたこと、そして最後に、彫刻家が「白色人種」として提示したのが、《ラグアトのアラブ人》だったことである。1820年代後半以降、アラブ地域の植民地化と軌を一にして、こうした白色人種内の序列・分化はより明確なものとなり、アラブ人は植民地の「他者」として「有色人―348――348―
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