ニ分チ形状ノ部ニ於テ器物類ニ於ケル用途ト形状トノ関係及器体各部ノ目的及形状其他一般製品ノ形状ニ関スル意匠上ノ原則ヲ授ケ」るものであり(注24)、そのほかに装飾に関する諸原則、色の性質と配色などがおもな内容だったことがわかる。実習科目であった「図案」は、改定前は「図案実修」と「図案応用」に分けられていた。「図案実修」は「各特修工芸品ノ意匠図案ノ製作ヲ実修」するものであり「内外新古ノ図案様式ヲ示シ本科特設ノ学科ニ依リ得タル知識ヲ応用シ形状ノ組織、模様ノ配置、色彩ノ配合等各種工芸品ニ直接応用セラルヘキ図案ヲ製作実修セシム」科目であった。また、「図案応用」は「各自ノ製作セル図案ヲ本校所設ノ各工場ニ於テ其適否如何ヲ研究シ工作法ノ如何ヲ理会セシムル」ことを目的としており(注25)、木工、金工、染織、漆工、窯業、製販の各分野において、図案をもとにした実制作も課していたことがわかる。一方、美工の「実習」は前半2年間に18時間ずつ、後半2年間に25時間ずつがあてられている。これは東京の2機関と比較すると3分の2程度の時間数となる。先に述べたように、この「実習」のなかには写生、模写、臨摸といった絵画制作の基礎的な内容も含まれているが、それ以外には1年目に「各種模様ノ割出法、絵具等ノ用法」、2年目に「各種模様ノ新案製作」、3年目に「平面図案ノ新案製作」、4年目に「平面及立体図案ノ新案製作」が課せられており、平面から立体へ段階的に図案を制作する課程となっている。明治期にこの科目で制作されたことがうかがえる資料は、染織製品の模様を図案にしたものが多く(注26)、先に述べた設立の契機ともなった地元産業界を意識した内容となっている。京高工の図案制作は「図案学及実習」の細目にある「装飾計画」のなかでおこなわれ、2年目の後半から卒業までの1年半のあいだに卒業制作を含めて27課題が課せられていた。課題の詳細についてはここでは触れないが、美工と同様に平面図案からはじまり、陶磁器、家具などの立体図案へと展開する(注27)。合計で46時間という時間数はほかの3機関と比較すると半分以下となり、先に述べた「画学」と「図学」がほか3機関と比較して相当な時間をかけていたためか図案制作そのものの科目は時間数が抑えられている。このことから京高工図案科では、技術習得重視の課程だったことがわかる。おわりに以上、東京美術学校図按科、東京高等工業学校工業図案科、京都市立美術工芸学校図案科、京都高等工芸学校図案科の教育課程の概要とそのうち図案制作に関わる科目―429――429―
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