鹿島美術研究様 年報第40号別冊(2023)
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Ⅱ.「美術に関する出版援助インターミディエイト」研究報告① イスラーム陶史  愛知県陶磁美術館所蔵の年代入りイラン製倣青花陶器についての一考察─陶工の語彙・韻文リテラシーと注文主の社会的地位の問題を中心に─報 告 者:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 特任助教Ⅰ はじめに本研究の目的は、第一に、ムスリムがマジョリティを占める北アフリカ・西アジアを中心とした地域において、7世紀に始まるイスラーム化以降の時期に制作された陶器およびタイル(以下、「イスラーム陶」と記す)の史的・地域的展開を、美術史学・考古学・文献学・分析化学の最新の研究成果に筆者独自の新知見を交えることで、国内の読者向けに提示することである。第二に、イスラーム陶を史料として見たとき、制作当時の文化的・経済的・社会的環境に関して何を導き得るのかについて、個別の事例を対照させながら多角的に論じることである。具体的には、素材・器形・用途・装飾(銘文と図像)のみならず、陶工・タイル工の有した教養、さらにはパトロネージの問題に注目する。第三に、日本を含む世界各地における、交易品ないし古美術品としてのイスラーム陶の受容史を、多くの新出作例を交えながら、明らかにすることである。2025年度以降に出版予定の単著『イスラーム陶史』は、前述の3つの目的に対応した3部の本編を序章と終章とが挟む構成をとる。以下では、まず、現時点での目次を示す。序 章 (陶という素材/「イスラーム陶」の定義と近年の研究動向/本書の射程と目的/陶器・タイル研究の手法/本書の構成)第1部 イスラーム陶史概説   第1章 7-11世紀:「イスラーム陶」の始まり/第2章 11-14世紀:フリット胎土の発明と装飾可能性の拡大/第3章 14-19世紀:青花(染付磁器)―549――549―神 田   惟1.2021年度助成

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