Ⅲ. 「美術に関する国際交流援助」研究報告⑴ 外国人研究者招致① 美術における価値の体現としての貨幣、メダル、コイン表象の研究期 間:2023年3月19日~3月26日(8日間)招致研究者:英国、コートールド美術研究所 名誉教授報 告 者:京都市立芸術大学 美術学部 准教授 深 谷 訓 子今回の招致は、主に「美術における価値の体現としての貨幣、メダル、コイン」と題したコロキウムにおいて、ジョアンナ・ウッドール氏(Joanna Woodall, コートールド美術研究所名誉教授)ならびにローレン・ジャコビ氏(Lauren Jacobi, マサチューセッツ工科大学准教授)にそれぞれの研究成果を発表して頂き、また韓国からも研究者ヤン・ジョンユン氏(Yang Jungyoon, アムステルダム大学)を招き、日本の研究者との意見交換の機会とするためのものであった。コロキウムのあらましを述べると、まずウッドール教授が基調講演を行い、そのうえで、伝統的な美術品収集や絵画に描かれた貨幣やコインの表象という観点から、第1部に3本の発表が行われた。「ブルゴーニュ公フィリップ善良公の治世におけるコインの表象」(大阪大谷大学、今井澄子教授)、「ティツィアーノ作《硬貨を手にしたキリスト》:フェッラーラの宮廷における活動の端緒」(京都市立芸術大学、大熊夏実氏)、「クェンティン・マセイスの《両替商とその妻》再考:〈2つの鏡〉に注目して」(京都大学、平川佳世教授)である。第2部は、貨幣、コイン、メダルの性質や役割を改めて問い直す意図を持ち、深谷訓子(京都市立芸術大学)の「西洋と日本の文化的、宗教的、経済的交流におけるコインとメダルの役割」と題した報告と、美学的な観点からの発表「金銭と芸術の対立を越えて:美学者としてのジンメル」(京都大学、杉山卓史准教授)が行われた。第3部はより社会的な文脈からのメダルの活用法を浮き彫りにした事例研究2本からなり、「愛とメメント:17世紀オランダの結婚記念メダルのイメージ」(アムステルジョアンナ・ウッドール(Joanna Woodall)―573――573―1.2022年度助成
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