(3)「審査寸感」『日本産業美術作品集第8回』(1939)評価点として・端的に観者に強い迫力を示している・商品の存在を明らかにしている・文字に対する技巧やアイディアのよさ・思い切った単化・目をひく多少ユーモラスで、明るくおおまかな図柄課題点として・一見して目的物が明示されない・商品と需要者と表現様式との関係に留意が足りない・外国物の追随が見られるをあげている。さらに今後の希望として・不可能でない限り品位を保ち、街頭美観の一助となること・日本の商業美術が新日本のものとして世界的進出に溌溂たる姿を見せることをあげている。これらの言説から、徐々に日本の広告デザインが西洋のデザインを取り込むことで、絵画性の高いポスターから脱却しつつ、人目をひき、商品を目立たせる本来の広告の目的に沿ったものになりつつあると考えていたことがわかる。つづいて、昭和14年発行の『日本産業美術作品集第8回』(大阪毎日新聞社編・発行)に掲載された「審査寸感」を検証する。これは前述の産業美術振興運動の第8回目となる展覧会の作品集である。まず霜鳥は、今回の新聞広告応募作品についておもに下記の点を指摘している。・全体としてレベルがあがっていること・表現形式にバラエティーがあったこと・ 数年来の手法と型とを踏襲しているものが多いものの、日本の広告図案がわれらのものになってきたこと・時局を扱ったものが多かったこと・時節柄、注目が集まるものを活用することの意義そのうえで、広告図案としての本質的なよさを尊重し、構想と技巧は正常堅実であるべきことはもちろんながら、広告人も作家も長期建設の確固たる信念の上にたつべきであると結んでいる。昭和6年にはじまった産業美術振興運動の成果として、表現技法の発達と技術の向上がみられるとともに、主題となる商品研究が十分になされて― 113 ―― 113 ―
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