注⑴ 幕末明治期の絵画については、辻惟雄編『幕末・明治の画家たち─文明開化のはざまに』ぺりかん社,1992年、辻惟雄編『激動期の美術 幕末・明治の画家たち[続]』ぺりかん社,2008年などに詳しい。⑵ 『日本美術全集 16 激動期の美術』小学館,2013年⑶ 例えば、樋口穣「「洋風」と「写実」-江戸~明治初期洋風画研究の基本事項の再検討-」『京都外国語大学研究論叢』60号,京都外国語大学機関誌編集委員会,2002年,247~260頁、志賀秀孝「江戸の洋風画と明治前期の油彩画をつなぐもの」『府中市美術館研究紀要』10号,府中市美術館,2006年3月,19~31頁、金子信久「西洋描画技術の変容─亜欧堂田善と十九世紀の画家たち」『府中市美術館研究紀要』14号,府中市美術館,2010年3月,7~15頁、角田拓朗「[研究ノート]十九世紀日本絵画史という夢」『科学研究費助成事業 若手研究(B) 洋風画・洋画を中心とした十九世紀日本絵画史の構築に関する基礎研究』,神奈川県立歴史博物館,2015年,5~12頁)などがあげられる。⑷ 安田雷洲についての主な先行研究については、拙稿「安田雷洲の没年及び画業について」『美術史研究』52号,早稲田大学美術史学会,2014年,62頁,註2にまとめている。その後の主な研究としては、曽田めぐみ「安田雷洲「大概順」(東京国立博物館蔵)について 旧蔵者 蘭方医・五十嵐其徳とのかかわりから」『浮世絵芸術』186号,国際浮世絵学会,2023年,5~15頁や『激動の時代 幕末明治の絵師たち』サントリー美術館,2023年などがある。⑸ 注⑷曽田氏論考。⑹ 幕末という時代については、注⑷サントリー美術館図録内の拙稿「幕末明治の絵師をめぐる随⑺ 版本挿絵など雷洲の初期作品については、河野実「安田雷洲の浮世絵の修学時代」『北斎研究』四、おわりにかえて本稿では、幕末明治期に洋風画を手掛けた数多くの絵師のうち安田雷洲の画業に注目し、現存作例をまとめ、関連する作品や絵師に言及した。改めて現存作例を振り返ると、江漢・田善に続いて江戸で活躍した雷洲であるが、両者とは異なり油彩画を手掛けていない。作品に油彩風の表現も多くはなく、むしろ銅版画の線描の再現や陰影描写に注力していたように思われる。また、「西洋の戦争」は雷洲にとって得意とした画題であったようで、御家人や蘭学者としての一面もうかがえる。本来であれば19世紀に活躍した様々な絵師を取り上げ、幕末明治期の洋風画の特質を考察できればと考えたが、紙片の都合上、また調査研究不足もあり、かなわなかった。個々の作品の制作背景や制作年代の検討など課題は多いが、各絵師の研究が進み、関係性の考察が深まれば、さらに幕末明治期の絵画の空白が埋められることになるだろう。今後、雷洲以外の絵師にも射程を広げて19世紀の絵画に関する考察を加えていきたい。想ノート」で、より詳細に言及した。18号,葛飾北斎美術館,1995年4月,31~50頁に詳しい。― 136 ―― 136 ―
元のページ ../index.html#149