鹿島美術研究 年報第41号別冊(2024)
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注⑴ 金子信久「亜欧堂田善筆〈浅間山真景図屏風〉の成立過程」(『美術史』133冊、1993年、93-109頁)や隈元謙次郎「高橋由一の風景画」(『美術研究』160号、1951年、31-44頁)、北澤憲昭「浅井忠ノート─初期の油絵をめぐる問題」(『みづゑ』918号、美術出版社、1981年、50-54頁)、林洋子「藤島武二の風景画への展開─「装飾画」を軸にして」『美術史』131号、1992年、50-65頁)、山田直子「小山正太郎における自然写生について─日本近代風景画誕生に関する一試論一」(『女子美術大学研究紀要』32号、2002年、165-173頁)、森園敦「彭城貞徳が描いた《夜の長崎港》に関する試論」(『長崎県美術館研究紀要』8号、25-38頁)など。なおこの点については王楽氏による「近代日本絵画における風景画の成立とその特質─名所絵から「無名の風景」への変遷を通して─」(博士論文)に詳しい。⑵ 榊田絵美子「高橋由一についての二、三の問題」『美術史』第115冊、美術史学会、1983年、⑸ 樋口穣「名所の変遷と旅」『研究論叢』(93)1-20頁、京都外国語大学国際言語平和研究所、⑶ 国史大辞典編集委員会『国史大辞典』第13巻、吉川弘文館、1992年、747頁「名所」の項⑷ 千野香織「名所絵の成立と展開」『千野香織著作集』(千野香織著作集編集委員会編)ブリュッ⑹ 和英対照日本美術用語辞典編集委員会『和英対照日本美術用語辞典』東京美術、1990年、614⑺ 青木茂『岩波近代日本の美術8 自然をうつす:東の山水画・西の風景画・水彩画』29頁⑻ 前掲注⑺、33頁⑼ 今回は取り掛かりとして『開館20周年記念特別展 日本美術の19世紀』図録、兵庫県立近代美術館、1990年/『揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに』図録、東京国立近代美術館ほか、2006年/『もうひとつの明治美術ー明治美術会から太平洋画会へ』図録、静岡県立美術館ほか、2003年/『特別展 五姓田のすべてー近代絵画への架け橋』図録、神奈川県立歴史博物館ほか、2008年/『近代洋画の開拓者 高橋由一』図録、東京藝術大学大学美術館ほか、2012年/『日本近代洋画の巨匠 和田英作』図録、刈谷市美術館ほか、2016年/『府中市制施行65周年記念 おかえり美しき明治』図録、府中市美術館、2019年/『白馬のゆくえ 小林萬吾と日本洋画50年』図録、という端緒を掴んだが、画家の垣根を取り払いサンプリングを行った結果として由一の特異性が目立ち、従来通り画家の枠組みの中で検討する状況となり、当初想定していたような包括的な分析が叶わなかった。《中洲月夜の図》については先述の定型モチーフを最低限用いながらも、画面全体の構成は伝統的な中洲の名所絵とは特徴を異にする。それは展示場所に合わせた縦横比、「浮世絵の空想世界を現実世界に引き戻す」という由一の目的、そして夜景表現の流行という複数の要素が絡み合って本作が成立したことに起因すると結論づける。ただし、由一の風景画を検討する際に避けるべきではない写真との関係については今回立ち入るに至らなかったため、今後の課題として認識する。49-61頁ケ、2010年、111-133頁に収録2019年頁「名所絵」の項― 181 ―― 181 ―

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