附同台」のうち、花生の胴部周囲にみられる異国風景図は、小川にかかるアーチ状の橋、三角屋根や円筒形の建物などが描かれている。建物には四角い窓のようなものもみえる。また、橋や建物には線を平行に連ねて陰影を設けているといってよい。一方で、花生台天板の異国風景図には、海と思しき水辺の側に三角屋根の建物が描かれている。透視図法の処理が上手くいっておらず、建物は多視点から捉えられた不思議な構造となっている。また手前には門のような建物が配されるが、それは寺院にみられる楼閣のような様相を呈している。また画面右上、水面に浮かぶ三艘の船は、いずれもほぼ同じ形状で、定型化したモチーフとなっている。「藍絵異国風景図台付大鉢」の異国風景図〔図10〕は、最前景に岩場と2本の木、中景に三角屋根の塔や風見鶏の装飾のある家屋、後景にはドーム状の塔がある建物を描いている。中景の建物の側には、ハット帽やドレスをまとった西洋人と思しき人々が語らう姿が描かれている。また、中景建物の屋根や壁面には、線を平行に連ねた陰影表現がみて取れる。「藍絵異国風景図木瓜形台」〔No.30〕は、画面の3分の2程度を占める前景に網目状の波の描写が特徴の川、中景に岩と木々、アーチ状の橋、後景に三角錐の屋根を持つ塔を配している。三角錐の屋根を中心に見る者の視線が後景へと誘うような透視図法を採っているといえよう。アーチ状の橋の欄干、家屋の壁面の角には煉瓦を並べたような装飾がみられるなど、細部に丁寧な描写を見出せる。線を連ねて陰影を表現する描写もみられ、銅版画の表現への意識が顕在化しているといえよう。「藍絵花卉唐草に異国風景図刀掛」の背板には、中央で語らう二人の人物を中心に、視線を画面の奥へと誘う透視図法が採られている。三角屋根や円錐形の屋根を持つ円筒形の建物が配されており、それらの壁面には線を連ねて陰影を表すハッチング技法が用いられている。透視図法、陰影法などの西洋画の技法を巧に採り入れようとする絵付師の姿勢が垣間見えるといえよう。「阿蘭陀写西洋風景図硯蓋」は、前景に木々を配し、後景に三角屋根や円筒形の建物を配している。木々や建物には線を連ねて、岩肌には点描で対象の陰影を表そうとしている。画面の奥行に破綻がなく、上手く透視図法を処理できているといってよい。「藍絵花卉唐草に異国風景図台」〔No.30〕は、煙突のある屋根やドーム状の屋根を持つ建物、アーチ型の入口のある塔をいくつも連ねた複雑な構図を採る。多視点で描かれているため、空間の奥行表現に違和感を覚えるものの、複雑な建物の構造は何かしら参考にした作品があったのかもしれない。一方で、京阿蘭陀にみられる異国風景図には、典拠となった図様─特に透視図法や陰影表現に対する理解が乏しい作例が存在する。例えば、「道八」、あるいは「粟田」「林山」銘のある「藍絵花卉唐草に異国風景図涼炉」〔No.31、32、33〕は、三角屋根の建― 474 ―― 474 ―
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