ての相談と、まさに受注制作の過程をつぶさに追う内容になっている。主人を米国に呼び寄せる電報のため、フランスから予定より早く戻りました。道中ロンドンに寄らなかったため、こどもたちの絵についてお手紙を差し上げる次第です。もちろん、私どもはあなたに絵を依頼したいのですが、裕福ではないので、このような贅沢をする余裕があるかどうかわかりません。そのほうがずっといいとお考えでしょうから、息子と娘を一緒に描いていただきたいと思います。もちろん衣装についてはお任せします。もしお手紙をいただければ、すぐにフィリップス氏に転送します。また、こどもたちをいつまでロンドンに滞在させる必要があるか、3月と4月のどちらにアトリエに伺うべきか、ご希望を教えてください。[…](1889年2月12日、エフィー宛)先週ロンドン滞在時に、こどもたちの絵を見る機会を得ました。メアリーの肖像は美しく、表情も素晴らしいと思ったのですが、フレッドの方にはあまり満足できませんでした。全体的に真面目すぎるというか、口元が実際よりも少し可愛らしく描かれており、そのためあの子の顔立ちが変わってみえたのです。ロンドンに戻られたら、もう一度息子に会って、なにがこの説明しがたい変化を引き起こしているのか確かめていただけないでしょうか。いつでも喜んで彼を連れていきますし、11月頭にはロンドンに参ります。(1889年10月3日、エフィー宛)フィリップス氏から、クリスマスに米国へ来るようにとの連絡があり、12月1日に出港します。次に帰国するまでに数ヶ月かかるかもしれず、できれば絵の件は解決しておきたいので、出発前にフレッドに会っていただくことは可能でしょうか。もし可能ならば、電報をください。すぐに息子をロンドンに連れていきます。(1889年11月23日、エフィー宛)細かい注文や相談を寄せてくるのは顧客だけとは限らない。エフィーはモデル探しG. M.コレクション内のミレイの手書きのメモによると、本作は1500ギニーで売却された。(注7)一連の書状は、エフィーが担った顧客対応の様子を仔細に物語っており、こうした業務がまさにミレイの画業を支えていた。― 36 ―― 36 ―
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