鹿島美術研究 年報第41号別冊(2024)
495/712

る・ 室町時代(15世紀) 吉水神社 役行者二鬼像  大峯山寺本堂像と同作者とみられ・ 鎌倉時代(13世紀) 金峯山寺 二鬼像 (役行者像は現存しないが、大峯山寺本堂・ 鎌倉時代(13~14世紀)クリーブランド美術館 役行者像(持物は亡失するが、両手先の形状から左手は錫杖、右手は錫杖より太い棒状の物を握っていたと考えられるため系統1-1に分類した)・ 元応元年(1319)高雄寺 役行者二鬼像(両手先の形状から左手は錫杖、右手は錫・ 南都絵仏師筆の吉野曼荼羅系統書整理(注2)や、役行者にまつわる縁起研究の成果(注3)もふまえ、選定した重要作例の制作背景を検討した。1 持物・手の構えによる役行者図像分類室町時代までの役行者を表した彫刻、絵画(役行者を中央に大きく描くもの/熊野曼荼羅等景観の中に小さく描くもの)を集め、持物によって大きく3系統に分類し、手の構え方によってさらに6系統に分類した。持物を亡失する高雄寺像、クリーブランド美術館像は左右の手の持物を持たせるための穴の径に差があることから、後述のように持物を推測した。また手先が後補である円楽寺像、法隆寺像などは上腕など当初部分の角度より手の構えおよび持物を推測した。系統1は左手に錫杖、右手に独鈷杵を持つ。このうち左肘を屈して錫杖を胸前で掴み、腹前もしくは膝上で独鈷杵を執るものを系統1-1、左手先を下げ掌を前に向けて錫杖を立て、右手は膝の上で独鈷杵と念珠を執るものを系統1-2、系統1-2に体勢が類似するが左手の錫杖の持ち方や持物が異なるものを系統1-3とした。系統2は左手に巻子または独鈷杵をもって胸の高さに捧げ持ち、右手に錫杖を持つ。系統3は左手に念珠、右手に独鈷杵を執る。中でも独鈷杵を胸前に引きつけ、腹前で念珠を垂下させるものを系統3-1、これ以外を系統3-2とした。系統1-1 作例が多く、応永年間から現在まで大峯山寺に祀られる役行者二鬼像や南都絵仏師筆の吉野曼荼羅が重要作例として挙げられる。・ 応永33年(1426) 大峯山寺本堂  南都仏師繁田三位法橋再興 役行者二鬼像〔図1〕の二鬼像と図像が類似するため系統1-1に分類した)杖より太い棒状のものを握っていたと考えられるため、系統1-1とした)― 482 ―― 482 ―

元のページ  ../index.html#495

このブックを見る