・ 鎌倉時代(13~14世紀) 法隆寺 役行者二鬼像 (二鬼は現状の持物を持ち替えると系統1-3の福住区本の図像に重なる可能性はあるが、角の有無、笈を負う鬼の手勢など、完全に一致はしない)・ 当麻寺縁起 熨斗家本(江戸時代1633年)では詞書どおり金剛杵・念珠を持つ骸を絵画化、土佐光茂筆当麻寺本(室町時代1531年)では詞は同じだが骸の持物を金剛杵・五鈷鈴に変更し、役行者に念珠をもたせて描く。賀彦根寺の像として制作した)系統3-1 重要作例として彫像の最古作例とされる円楽寺像を含む。・平安時代(12世紀~13世紀) 円楽寺 役行者像〔図5〕・南北朝~室町時代(14~15世紀) 醍醐寺 役行者八大童子〔図6〕・錦織寺など熊野曼荼羅の画中系統3-2 念珠・独鈷杵を持つ姿は、絵巻では経行などの場面にみられる。・室町時代 メトロポリタン美術館 役行者二鬼像(画像)・室町時代(15世紀) 金峯山寺 吉野曼荼羅・ 鎌倉~南北朝時代(14世紀) 神於寺縁起のメトロポリタン美術館所蔵断簡(鬼神を使役する場面)その他・ 鎌倉時代(13~14世紀) 松尾寺 役行者八大童子像 右手に短い錫杖、左手は元々巻子を執っていたが青で塗りつぶして独鈷杵に描き変える実見できていない像や熊野曼荼羅に描かれる小さな役行者像は網羅できておらず、すべての役行者像を分類できてはいない段階ではあるが、数種類の図像系統があったことがわかった。特に系統1-2・系統3-1は彫像と画像が細部まで一致する規範性の強い図像である。系統1-2の慶俊像は享保6年(1721)まで大峯山上に祀られており(注5)、山岳修行の一大拠点であった大峯の重要な像であった可能性がある。また作例の最も多い系統1-1も大峯山上に祀られていた彫像の図像であり、大峯山上の役行者像が図像流布に影響した可能性が高い。各図像系統の重要作例の制作背景を考察するため、次の3点を検討課題として設定した。すなわち、(1)彫像と画像の関係、(2)大峯山上の役行者像、(3)大峯山上の役行者御影供と図像の形成である。― 484 ―― 484 ―
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