・「レオーネ・レオーニ作《カール5世と狂気》に関する考察─作者の制作意図をめぐって」(『スペイン・ラテンアメリカ美術史研究』第24号、2023年、1-17頁)2. 本書IV章「絵画と彫刻の間あわい─「絵は彫刻のごとく」、「彫刻は絵のごとく」」で取り上げる予定の、アクイ・テルメ大聖堂(イタリア)所蔵バルトロメ・ベルメーホ作《モンセラの聖母三連祭壇画》およびベルギーの関連作品についての現地調査と資料収集、執筆、論文投稿3. 本書II章「黄金世紀における絵画と彫刻をめぐる言説と美術家の社会的地位」執筆に関わるフィレンツェのアカデミーに関する現地での一次資料の収集以下、上記1~3の各点についてそれぞれの実施・進捗状況を報告する。1.① スペイン黄金世紀の美術理論や美術家の社会的地位、また同時期の彩色木彫全般に関しては、本研究開始以前から一次史料も含めかなりの数の書籍、論文を収集してきている。しかし未読のままになっているものが少なからずあったため、今年度はそれらを分類、整理し、本書出版計画において重要度の高い文献から優先して精読を進めてきた。② 当初のスケジュールには含まれていなかったが、II章およびIII章に部分的に組み込むことを想定して以下の2論文を執筆、刊行した。上記論文は、神聖ローマ皇帝カール5世(スペイン王カルロス1世)の注文によりイタリア人彫刻家レオーネ・レオーニが制作したブロンズ彫像《カール5世と狂気》 特に、昨今の女性美術家研究の活況を背景に出版が相次いでいる黄金世紀の女性彩色彫刻家ルイサ・ロルダン関連の諸文献からは、本書II章第1節「美術家の社会的地位」およびIII章第3節「協働する彫刻家と画家」の執筆に役立つ多くの知見を得ることが出来た。女性ながら宮廷彫刻家の地位までも手に入れたロルダンの成功の秘訣を探る中で、当時の彫刻家工房の運営のあり方や組合のしきたり、宮廷彫刻家の実態といった職業的慣行に関する貴重な情報が多々提供されているからである。当時の美術家の社会的地位について考察する上で、職業的視点にジェンダー的視点も取り入れた複眼的アプローチが有用であることに気づかされたという意味でも収穫であった。― 606 ―― 606 ―
元のページ ../index.html#621