鹿島美術研究 年報第41号別冊(2024)
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期   間:2023年9月7日~9月19日(13日間)      2024年2月24日~3月6日(12日間)派 遣 国:イラン報 告 者:芝浦工業大学 建築学部 准教授 岡 崎 瑠 美      筑波大学大学院 システム情報工学研究科 准教授 松 原 康 介青 木   健      静岡文化芸術大学 文化政策学部 教授 1.研究の背景・目的昨今、日本イランの間で美術工芸建築をめぐる交流事業が多く開かれ、その中で近世・近代における両者の新たな邂逅とそれにともなう新たな芸術形式の生成という課題が浮かび上がった。テヘラン中心部のゴレスタン宮殿は16世紀前半の城塞を起源とするが、特に19世紀のガジャール朝期に室内を全面的に鏡で装飾する「アイナ・カリ」と呼ばれる技法で大々的な増改築がなされた。この宮殿には陶磁器、ガラス製品、織物など東西の文物が集積され、その中には相当量の日本の文物(陶磁器、銅細工、螺鈿など)が含まれ、一部はアイナ・カリとともに室内装飾に用いられている。イラン側には日本コレクションの由来はおろか、そのリストすら存在しない。いち早い解明が望まれている。以上を踏まえ、本研究はテヘランのゴレスタン宮殿を主たる対象となし、19世紀後半の宮殿装飾と日本コレクションの関係を前提に以下の点を追求する。1)ゴレスタン宮殿博物館収蔵の日本コレクションのリスト化ならびに履歴の解明②  19世紀後半ペルシャ建築における鏡面装飾(アイナ・カリ)と日本の工芸品の関係をめぐる共同研究― 642 ―― 642 ―(岡崎・松原・ジラルデッリ青木)ゴレスタン宮殿博物館に収蔵・展示される「中国・日本コレクション」と記される一群の作品のリスト化をはかり、その特徴、製造地、様式などを特定する。加えてそれらの宮殿内での装飾としての配置を確認し、「アイナ・カリ」等室内装飾の関係を視覚的に明らかにする。また、作成されたリストはゴレスタン宮殿美術館に提出され、同博物館の収蔵資料として活用する予定である。イスタンブール工科大学准教授補、ジラルデッリ青木美由紀氏と合同で調査を実施。

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