2) 「バーゲカー子」と日本使節団―ガジャール朝時代のテヘラン都市計画の一断面 (松原)1880年に試貿易を目的に日本からペルシャに派遣された使節団の役割を再評価し、彼らが宿泊した宮殿「バーゲカー子」を同定し、日本製品のミニバザールとして如何にテヘランの貴族層や外交団に影響を与えたかを解明する。また、同使節団の副団長であった古川宣誉工兵大尉の交友関係を通して、当時のテヘランの都市計画、軍備、宗教などの実相を明らかにする。3)ガジャール朝時代におけるゾロアスター教とその日本への伝搬について(青木)1880年の日本使節団がペルセポリスやテヘランで経験したゾロアスター教との邂逅を追跡し、古川宣誉が開拓し、その後のさまざまな知識人が抱いた古代ペルシャへのまなざしについて当時の文献から明らかにする。2.研究手法研究手法は以下の方法による。・現地踏査(青木) 2023年9月 ( イランにおける政治情勢の緊迫化により他のメンバーの入国自粛が求められたため、イランに詳しい青木を除いて現地踏査を延期する)・ゴレスタン宮殿現地調査(松原、岡崎、ジラルデッリ青木) 2024年3月・文献調査(全員)3.研究対象イランのもっとも格式ある美術館でもあるゴレスタン宮殿博物館には「日本・中国コレクション」として磁器ならびに銅細工品が所蔵され展示されている。一見したところ、日本製が大半を占め、一部中国製、さらに欧州製の磁器も混じっているが、展示パネルには特に明記されていない。博物館側もその由来の解明に強い関心を抱いており、日本側の専門家による調査が期待されていた。今回の調査では、この「日本・中国コレクション」を対象に、日本製磁器を同定しリスト化することを第一の目的とした。さらに、これらの陶磁器がイラン(ペルシャ)にもたらされた背景として、日本ペルシャを繋ぐチャネル、その文化的背景、国際情勢などについて明らかにする。― 643 ―― 643 ―
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