Boston Surveyといった)した。ストレージから運び出される作品の寸法をその都同388番)など、未知の傑作が次々と現れ、小林忠氏、浅野秀剛氏、内藤正人 1989年、私がハーバード大のフェローとして故ローゼンフィルド教授に招 序文にも触れられているように、本書は1997年と2003年に講談社より刊行された『ボストン美術館日本美術調査図録』の増補・新訂版として企画されたものである。惜しくも未完に終わった講談社版につき、アン・ニシムラ・モース氏とともに当時の編集責任者を務めた辻が、その折の経緯につき少し回想させていただく。かれた折、ボストン美術館で日本美術部門を担当するアン・ニシムラ・モース氏と親しく話し合う機会があった。ちなみにアンさんは、ローゼンフィルド教授の教え子である。 アンさんはその時嘆いていった。これまで日本から研究者が何度も来て、何度も同じ作品をカメラに収め日本に持ち帰るが、その後どうなったかは音沙汰ない。無駄な繰り返しにも思える……。それを聞いて私が思いついたのは、ボストン美術館の膨大な日本美術コレクションの総合目録を作るという、いささか無謀な計画である。 幸い鹿島美術財団から特別に基金の援助をいただき、1991年に第1回の調査がまず仏画から始まった。続いて仏像、仏具、袈裟、能面、土佐派、琳派、水墨画、初期狩野派・桃山諸派、蕭白・若冲、近代絵画、絵巻物……といった各分野に応じ、それぞれの分野の専門家が日本から派遣され、モースさん以下館員諸氏との共同作業で、膨大な所蔵品を悉皆調査(ボストン側ではこれを度測り、形状や保存状態を観察してノートに記録し、撮影も同時に行うという目まぐるしい作業が果てしなく続く。アン・ローズ・キタガワさん、エミコ・ウスイ・ミキシュさん、オカ・ミドリさん、それに写真部の方々ら、館側のスタッフの熱心さも強く印象に残っている。 何万枚あるかわからないという膨大な浮世絵版画は調査の対象から外したが、代わりに肉筆浮世絵の調査では、保存のよい勝川春章の「春遊柳蔭図屛風」(「XII 浮世絵」202番)や□飾北斎の大作「朱鍾馗図幟」(同374番)や「提燈絵 竜虎」(当時はまくられて断片状だったが、現在はもとのかたちに見事に復元された。氏ら調査員を驚かせた。 ただ残念なことに、当時、撮影がマニュアルからデジタルへの過渡期に当っていたため撮影が手間取ったことなどあって、調査が予定より大幅に遅431あとがき
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