ボストン美術館 日本美術総合調査図録 図版篇
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。□ 番「阿古父尉」などは天心の示唆によるものであり、ビゲローものちに宮田筑後の137番「般若」や友閑 能・狂言面166面という量と、江戸前期から中期の有名作家の作品を網羅し、さらに後期から明治にいたる作家のものまで加えた質の高さまで考えると、日本国内に現存の代表的なコレクションに比肩するものであろう。個々の作品を考えてみても、優れたものを多くみるが、それらの制作の背景、すなわち原所在と伝来の様相がうかがえぬことは、歴史的な付加価値をも評価しえないうらみがある。ビゲローの伝記に詳しい村形明子氏も、能・狂言面の収集に中、名作を多く含む絵画や工芸・仏像などにくらぶべくもないからであったろう。ビゲロー自身の問題でもあろうが、今後彼の書簡などの精査によって、□8□幾らかでも明らかになることを希望するものであるの111番「孫次郎」、備前池田家旧蔵面と思われる118番「曲見」などを加えている。□7□ついてはほとんど記していない。それは彼の収集品(五)[凡例][Explanatory Notes]1 この一群の面は、ビゲローが1890年に、これまでに集めた1万5千点以上にのぼる古美術品を一括ボストン美術館の前身である組織に寄託していたものの本章に収録した仮面類は、まず用途別に区分けした。 能面 (1〜143番) 狂言面 (144〜166番) 伎楽面 (167〜171番) 舞楽面 (172〜194番) その他 (195〜203番)用途別の次に、種類(名称)別、時代順に配列してある。但し、名称の特定しにくい作品については、近似する種類に分類し、?マークを付けた。This section is divided into five parts according to the theatrical usage of the masks as follows:(Nos. 1−143)Nō masks Kyōgen masks (Nos. 144−166)Gigaku rnasks (Nos. 167−171)Bugaku masks (Nos. 172−194)Other masks (Nos. 195−203)In each part the works are arranged by type and then period. Works for which a type cannot be firmly established are included with similar works and are indicated with a question mark.1022 F・ペルチンスキー『日本の仮面―能と狂言』(吉田次郎訳、2007年、法政大学出版局(原著は1925年))3 中村保雄「江戸初期の能面作家たち」(下)(『わか4 16番「三光尉」等制作期も中村保雄氏の説に従って5 69番「瘦男」、77番「邯鄲男」、109番「増女」の作6 前掲□1論文。7 村形明子『フェノロサ資料』Ⅰ・Ⅱ(ミューゼアム出版、1982・1984年)、同氏「ビゲロー略伝」(『古美術』35号、1971年)等参照。8 能装束などと考えあわせて、能面も東京・山中商会中に含まれていたらしい。これらは1904年同館にまねかれた岡倉天心の調査後正式に館蔵となった。アン・ニシムラ・モース「正当性の提唱―岡倉覚三とボストン美術館日本コレクション」(『岡倉天心とボストン美術館』図録、名古屋ボストン美術館、1999年)等参照。の宮田筑後の項に『能楽大辞典』によって東京国立博物館の長霊癋見と喜多家の姥、『ジローコレクション競売目録』なるものによって瘦女を加えた3面を記している(後の2面の実在は不明)。東京国立博物館の面に関しては林忠正『日本美術史Histoire de l’art de Japan』(1900年)もあげる。め』第7号、耕春会、1980年)。訂正したい。者「出目満直」については保田紹雲「出目満直及び元利家伝書について」(『名古屋芸能文化』18号、2008年)等によって出目元休家二代満茂に比定されているが、傍証がなく、ここでは採らない。の手を経ている可能性がある。現在同商会には資料がなく、ボストン美術館にそれが残っていれば、この問題は解決するかと思われる。

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