ボストン美術館 日本美術総合調査図録 図版篇
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風(重要文化財)に近く、あるいは等伯自身による下87番「群仙・禅機図屛風」は、初期の興以作の可101番「龍虎図屛風」は、等伯晩年の大作として従番の類型)、松花堂昭乗まがいの図4点(151〜154番)、一変種とみれば興味深い。84番「鷹図押絵貼屛風」も、曽我派風とは別の画風による鷹図の存在を暗示する。ただしそれが「山楽風」といえるかどうか。能性が指摘されており、検討の要がある。伝興以の掛軸、屛風はこのほか合わせ5点あり、興以研究の資料を提供する。 桃山時代の巨匠長谷川等伯、海北友松、雲谷等顔、曽我直庵と江戸時代に至るそれらの流派の消息を伝える作品54点を調査することができた。 まずは等伯率いる長谷川派の作品で、計8点ある。来から知られ、ここでの解説もそれを認めているが、山根有三氏はこの図の落款に見るような「自雪舟五代長谷川法眼等伯筆」と落款のある作品を、慶長年間の長谷川派の筆になるものとして認めない。この説の当否は、等伯晩年の作風の問題と合わせ、今後の検討を待っている。これに対し、100番「猿猴図屛風」は無落款で、筆致は相国寺の同画題の屛絵かもしれない。さらにくわしい検討を要する作品である。左近の104番「牧牛・牧馬図屛風」は、印章からは左近筆と確定できなかったが、優れた描写と構成を持つ佳品である。 海北友松および海北派とされる作品10点には見るべきものなし。そのなかで町絵師の作と思われる伝友雪筆の114番「狻猊図屛風」は、大胆奇抜な表現が印象に残る。 雲谷等顔の117番「東坡・潘閬図屛風」は最晩年の傑作であり、118番「山水図屛風」は最初期の屛風絵の佳品。 最後に調査したのは曽我直庵、二直庵および田村直翁ら曽我一門の作品30点余りである。この中には150番伝小野通女筆「麻姑仙人像」(伝山楽作83長崎派による力作の165番「鯉魚図」双幅など、曽我派以外の作品も紛れ込んでいるが、それらを除いても相当な数である。ボストン美術館の曽我派コレクションの数の多さは、蕭白の特異な画風に触発された結果かもしれない。 だが、曽我直庵の作品は稀少なためか、コレクションの中に直庵自筆の作品はなく、二直庵の138番「鷲鳥図屛風」が、直庵の屛風のダイナミックな構成を伝えるものとして残るだけである。 それより、蕭白描く獰猛で奇怪な鷲鷹の原形ともいうべき図が、コレクションの中にいくつも見出されることに注目したい。133番「鷲図」、141番「鷹に狐図」、147番直道筆「鷹図」、167番式部筆「鷲鷹図押絵貼屛風」などがそれである。中で、167番「鷲鷹図押絵貼屛風」に描かれた妖異な鷹たちは、蕭白前派のそれといって差し支えない。式部の名は『古画備考』の狩野譜伝に載ると本図の所見にあるが、この異色の画家の実態を追うことは興味ある課題である。2.桃山諸派167

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